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書籍「Effectuation エフェクチュエーション」 ㉕

第6章 パートナー獲得のための行動:問いかけ(asking)

 

パートナーに対する2つのアプローチ

 

第5章では、「クレイジーキルトの原則」と呼ばれる、エフェクチュエーションにおけ

るパートナーシップの考え方を整理しました。パートナーが自発的な参加者として、

新たな資源と目的の両方をもたらすことで、「何ができるか」の方向性と実効性に対し

て大きな影響を与えることを確認できましたが、それでは具体的に、起業家はどのよう

にパートナーのコミットメントを獲得する行動を起こせばよいのでしょうか。

エフェクチュエーションにおいて、コミットメントを得るためのパートナー候補への

働きかけは、「ask」や「asking」と呼ばれます。これは何かを求めて尋ねることを

指しますが、日本語では「問いかけ」と訳す事ができると考えています。

コーゼーションの発想に基づいてパートナーシップを模索しようとする際には、「売り

込み(selling)」が重視されがちであるのに対して、エフェクチュエーションではそれと

は異なるアプローチである「問いかけ(asking)」が重視されます。

まずは、「売り込み(selling)」と「問いかけ(asking)」という2つのアプローチの違いを、

ある事業アイデアを持つ起業家が、自らの事業にとって必要な資源を持つパートナー

候補からのコミットメントを獲得しようとしている、という状況の例で確認してみたい

と思います。

 

コーゼーションに基づく「売り込み(selling)

 

コーゼーションの場合には、事前に定義された目的を達成するために、分析や予測に

基づいて最適なアプローチを追求する発想であるため、事業アイデアもよく練られた

最善のものが求められるでしょう。そこでパートナー候補に対して協力を求める際にも、

それがいかに優れているのかを積極的に説明することで事業アイデアやビジョンを売り

込むこと(selling)が重視されがちです。たとえば、出資をしてくれそうな投資家や、開発

に必要な技術を所用する研究者といったパートナー候補のコミットメントを獲得したい

場合には、まずは自身の事業アイデアやビジョンを明確化して、それを積極的に売り込み、

共感が得られれば必要な資源(資金や技術)の獲得に成功する事が期待されます。逆に、

もし共感が得られなければ失敗であり、同様の資源を提供可能な別のパートナー候補を

模索することが検討されるでしょう。

つまり、コミットメントを獲得しようとする行動の結果は、成功か失敗のいずれかで

あり、基本的には一人のパートナー候補に対して一回きりの交渉が想定されています。


 

この続きは、次回に。

 

2025年12月14日

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

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