書籍「Effectuation エフェクチュエーション」 ㊷-2
直接子どもと接する先生だけでなく、小中学校の校長、教頭などの管理職の方、教育委
員会の教育長や職員の方にも、ぜひエフェクチュエーションについての理解を深めてい
ただきたいです。なぜなら、公立の小中学校という組織は、明治以来創り上げられてき
たコーゼーションの塊に見えるからです。文科省が提示する学習指導要領は、私たちの
先人、そして、今の大人が経験してきた社会を想定し、そこで生きるためにデザインさ
れたコーゼーション思考のガイドラインです。
しかし、そのような組織での教育が合わない子どもが増えている、というのも1つの事
実です。現在、一般的な公立の小中学校を年30日以上長期欠席する子どもの数は約29
万人で、そのうち不登校によるものは、約20万人となっています(令和2年調査)
不登校の子どもに対して、多くの場合、まず学校は登校してもらうように促すことにな
ります。コーゼーション的な視点からは、子どもを学校で学ばせることを目的として、
学校に生かせる手段を模索し、そこに現場の先生という資源を投下しているように見え
ます。
一方で、このシーンをエファクチュエーションとして見ると、子どもは、行きたくない
という意思、つまり彼なりの「手中の鳥」を使って、「許容可能な損失」の範囲内で、
学校に行かないという行動をしているように思えます。
私は、子どもに学校に行くように促し、一般的な授業を受けさせることを否定はしてい
ません。私が問題視しているのは、現場の教師に多大な負担がかかっていくことが、
本当に「許容可能な損失」で、できることなのかということです。
すでに、学校の先生は大変だということが社会的に知られるようになっており、教職を
志望する人が減っているという危機的な状況です。しかしこれも、若い人たちが「許容
可能な損失」を見極めて行動しているように見えます。
私は、エフェクチュエーション的な見方を、学校運営を変えることができる責任と権限
を持った教育委員会の委員長や職員、そして、現場の管理職である校長・教頭に持って
もらうことを期待しています。では、エフェクチュエーションの思考をもつと、どんな
行動が可能になるのでしょうか。
実は、私は、現在住んでいる印西市でフリースクールを街の仲間と運営しています。
そこでの経験からのアイデアは、たとえば、フリースクールを不登校の子どもの選択肢
の1つとして捉え、学校の役割を一部放棄してもらうことで、学校の負担をなくし、フ
リースクールを学びの場として積極的に認めてもらうというものです。
現状、フリースクールでの学習を登校扱いにするかは、各学校長の判断に委ねられてい
ます。これを制度として取り入れることは、東京都や千葉県など多くの自治体で検討さ
れていますが、私はそれを待たず、教育委員会の教育長や職員の「手中の鳥」で、「許
容可能な損失」で、不登校の子どもの学びを両者で解釈し直すところからやっていくこ
とができると考えます。それが、私のエフェクチュエーション的な提言です。
そのためには、学校の校長や教頭に「許容可能な損失」を正確に見極めてもらい、教育
委員会や教育長に、「クレイジーキルト」で、思い切っておねだりをしてもらうことが
必要になります。
私は、9章、10章に書いたような経験を通じて、エフェクチュエーションを、起業家や
イノベーターのための特別なものとは、考えることができなくなりました。むしろ、人
がそもそも生まれたときから持っている意思決定の様式です。それは、赤ちゃんにまで
さかのぼるとよく理解できます。赤ちゃんは、人、床、壁など、さまざまなものを舐め
ます。それは、何か目的を持っているというよりも、本能に近いものです。その行為は、
まさにエフェクチュエーションそのものに思えます。なぜなら、赤ちゃんにとっては、
周囲の多くが予測不可能な環境だからです。
それが成長するにつれ、周囲には予測可能なものが増え、コーゼーションを多用してい
きます。それはよいことなのですが、しばしば私たちは、予測可能なことにもコーゼー
ションを使う間違いを犯すようになります。
そして現在、予測可能なことの割合は、日々高まっているように思えてなりません。
しかし、エフェクチュエーションという考えがあることで、社会に起こった違和感の
ある現象を、違った視点で理解することはできます。
本書を読まれたことで、世界をエフェクチュエーションとコーゼーションの双方で解釈
できる人が増え、手持ちの資源から手段を選び実行できる社会を積極的に容認し、人類が未だかつて見たこともない未来が育まれることを心から祈っています。
2023年7月 中村 龍太
今回で、書籍「Effectuation エフェクチュエーション」のご紹介は、最後となります。
今回の「代表のブログ」は、体調を崩したために、十分に最後までご紹介することが
できませんでした。
宜しければ、是非、購読いただき、「最後まで」ご覧いただき、「新しい気づき」に
していただければ幸いです。
2026年2月24日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美

