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創業家物語 第3章

第3章

「兄弟継承型」の創業家

 

豊田家—

トヨタ自動車□「一人一業」–業祖・豊田佐吉が「一人一業」を説いて、代々の

盟主は、それぞれが新事業を起業したという説がある。

 

井植家—

三洋電機□井植歳男は豪放磊落な性格で、親分肌、面倒見がよく、部下に慕われ

た。独立して三洋電機を創業した後、歳男の周辺にはサントリーの佐治敬三、

ダイエーの中内功、ダイキン工業の山田稔など関西の若手経済人が集まり、

「井植学校」と呼ばれた。

松下幸之助氏は、‘経営の神様’と称賛されたが、「松下学校」なるものは

ついぞ生まれなかった。

 

出光家—

出光興産□「尊ぶべきは、金や物より人間だ」とする出光佐三の人間性に惚れた

日田重太郎が6000円(現在の9000万円相当)の大金を、「貸すのではなく、

貰ってくれ」と申し出た。資金提供するにあたって、重太郎は三つの条件を

つけた。

第一は、従業員を家族と思い、仲良く仕事をしてほしい。

第二は、自分の主義主張を最後まで貫いてほしい。

第三は、自分が金を出したことは他言無用、というものだった。

 

御手洗家–

キャノン□御手洗冨士夫は、1995(平成7)年、本社の社長に急遽、リリーフとし

て登板したが、米国型実力主義を生かした日本型終身雇用制という「和魂洋才の

経営手法」で躍進した。

世の中は10年単位で大きく変わるというのが、冨士夫の基本的な認識だ。

経営手法は今の時代には適応しているが、次の時代に求められるものはまったく

違うかもしれないと考えている。今の成功体験が次の事態に通用するとは思って

いない。人材の流動性が高い社会になれば、終身雇用制は即座にやめるべきだ

と断言するのである。米国型経営、日本型経営というが、どちらもその要には、

経営者の倫理観がある。倫理観に欠ける経営者が成功することはないと信じて

いるからだ。確かに、米国は宗教的信念、日本は愛社精神が底流にあるが、米国

型経営、日本型経営といった言葉で括ることにたいした意味はないと、筆者は痛感

している。和魂洋才について、もう少し説明する。実力主義を生かした終身雇用制

である。23年間に及ぶ在米経験を生かして合理的経営を実践する一方で、社員重視

の和の精神を忘れない。米国型経営の長所と短所を知り尽くしているからできるの

だ。株主は大事だが、日本企業の競争力の源泉は人材にあると冨士夫は確信してい

る。とはいっても、年功序列に安住するとチャレンジ精神がなくなり、向上心が鈍

る。年功序列は企業の活力を失わせるという欠陥を持つ。首を切らない代わりに、

年功序列を廃し、社内で競争原理を最大限に発揮させるというのが御手洗流だ。

米国型と日本型の「良いとこ取り」である。

辛疎な見方をする財界人は「クローニー・キャピタリスト」(縁故資本主義の経営者)と呼ぶ。

インターネットより、

和魂洋才 意味
日本固有の精神を失わずに、西洋からのすぐれた学問・知識を摂取し、

活用すべきであるということ。

「和魂」は日本固有の精神のこと。

「洋才」は西洋の学問に関する才能や知識のこと。

「和魂漢才」の類推から生まれた語。

和魂洋才 用例
日本の国家社会で有用の材となるには、和魂洋才でなくてはいけません。

クローニーキャピタリズム【crony capitalism】

縁故関係者や仲間どうしで国家レベルの経済運営を行い,権益を独占して富を

増やしていく経済体制。

〔クローニーは仲間の意。1990年代後半のアジア経済危機の際に用いられた〕

開発独裁

 

鳥井・佐治家—

サントリー□「新しいものをつくりだし、それで人々を喜ばせ、それで金を儲ける

のである。それが事業である。それ以外の金には意味がない」「名を捨て実を取

る」合理主義が横溢していた。

英国以外でウイスキーをつくる圭角は荒唐無稽と思われ、全役員が反対した。

そのとき、鳥井信冶郎が言った有名な言葉がある。

「やってみなはれ、やらなわからしまへんで」

 

この続きは、次回に。

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