お問い合せ

企業とは何か-Appendix②

2.1993年版へのまえがき

 本書は企業についての本ではなく、「組織」とマネジメントと社会についての本だった。

 経済的なニーズを満たすための人間社会として企業をとらえた最初の本であると同時に、

 特有の仕事と責任をもつ機関としてマネジメントをとらえた最初の本だった。

 本書は、アウトサイダーが「組織」の内部を調べた数少ない本だった。

 本書が、マネジメントを一つの体系および研究対象として確立したとされている。

 私は、「組織」を一つの種としてとらえ、その研究を一つの種としてとらえ、

 その研究を一つの体系として確立した。

 産業社会では、一人ひとりの人間に位置と役割を与える「組織」、かつての社会と

 コミュニティの役割を果たす「組織」が必要であると結論していた。

 

・あらゆる組織に共通する問題

 本書は、働くことに関わる問題を、人と「組織」の関係、人と仕事の関係、人と人の関係として

 とらえた。それは当時まったく新しいとらえ方だった。

 もちろん働くことに関わる問題の多くは、今日では誰にとっても馴染みのものである。

 そして企業であろうがNPOであろうが、あらゆる「組織」が直面する問題である。

 私は1983年に追加執筆したエピローグ(終章)において、初版刊行時にGMの人たちが示した

 不機嫌さについて触れた。

 

・GMの再起はあるか

 今日(1993年)のGMは、1946年当時のGMとはもちろん再版に際して序文とエピローグを書いた

 83年当時のGMとも違う。私はそのエピローグにおいて今日のGMの危機を警告した。

 だが当時でさえ、GMの経営幹部の誰一人として、危機の存在を認めるどころか感じてもいなかった。

 しかし10年後の今日、私の警告の正しさは十分すぎるほど明らかとなり、GMは守勢の一方である。

 10年前私は、GMにも業績回復の道はあることを指摘した。しかし実際は、そうならなかった。

 そして今日にいたるも立ち直れないでいる原因こそ、私が本書で指摘し、そのために無視されることに

 なった問題だった。

 問題の解決は何らかの破局がないかぎり不可能かもしれない。この頃私は、自発的にせよ強制的にせよ、

 企業分割以外の方法では、GMは甦りえないのではないかとさえ危惧するにいたっている。

 

1993年春

カリフォルニア州クレアモントにて  ピーター・F・ドラッカー

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る