チェンジ・リーダーの条件-24
○ 人事には姿勢が現われる
マネジメントの空極の手段は、人事である。
その反面、人事は、マネジメントがどの程度有能であるかも、その価値観がいかなるものであるかも、仕事にどれだけ真剣に取り組んでいるかも明らかにする。
人事は、いかに隠そうとしても、結局は知られる。
それは、際立って明らかである。
公正な人事のために全力を尽くさないトップマネジメントは、組織の業績を損なうリスクを冒すだけではない。
組織そのものへの敬意を損なう危険を冒していることになる。
4章 同族企業のマネジメント
○ 生き残りを左右する原則
同族企業に触れることはほとんどない。
同族企業と他の企業の間に、研究開発、マーケティング、経理などの仕事で違いがあるわけではない。しかし、同族企業はマネジメントの構成に関して、いくつかの原則を必要とする。
それらの原則は厳しく守らなければならない。
さもなければ、生き残ることはできず、繁栄など到底できない。
○ できの悪いものは働かせるな
第一の原則として、一族の者に比べて、同等の能力をもち、少なくとも同等以上に働く者でないかぎり、同族企業で働かせてはならない。
○ トップマネジメントに一族以外からも採用せよ
第二の原則も、同じく簡単である。
一族の者が何人いようと、また彼らがいかに有能であろうと、トップマネジメントのポストの一つには、必ず一族に属さない者をあてなければならない。
○ 専門的な地位には一族以外の者も必要
第三の原則として、同族企業といえども、まったくの中小企業を除き、専門的な地位には一族以外の者を必要とする。
いかに一族が優秀であっても、生産、マーケティング、財務、研究開発、人事に必要な知識や経験はあまりに膨大である。
もちろん、そのような部門のトップにおいた専門家は、一族と同等に扱わなければならない。
完全な市民権を与えなければならない。そうしないかぎり辞めていく。
○ 適切な仲裁人を外部に用意せよ
後継者問題に関わる意思決定は、一族の者ではなく、しかも利害関係をもたない外部の者にゆだねることである。
今日、経済成長の活力は、巨大企業から中堅企業へと移行しつつある。
中堅企業の多くは同族企業である。したがって、社会にとって、同族企業を支援し、その継承を容易にすることは、起業家精神の観点からも重要である。
今日、前述の四つの原則を守り、その根底にある理念を理解している同族企業はほとんどない。
その理念とは、同族企業にせよ、それを所有する一族にせよ、一族が同族企業に奉仕するときにのみ、生き残り、繁栄することができるということである。
一族に奉仕すべくマネジメントしたのでは、同族企業も一族も生き残り、繁栄することはできない。
「同族企業」という言葉の鍵となるものは、「同族」のほうではない。
「企業」のほうである。
この続きは、次回に。