チェンジ・リーダーの条件-25
Part5 起業家精神のマネジメント
1章 予測できないことを起こす
○ 明日をつくるために今日何をなすべきか
われわれは未来について、二つのことしか知らない。
一つは、未来は知りえない。二つは、未来は、今日存在するものとも、今日予測するものとも違うということである。だが重大な意味をもつ。
第一に、今日の行動の基礎に、予測を据えても無駄である。
望みうることは、すでに発生したことの未来における影響を見通すことだけである。
第二に、未来は今日とは違うものであって、かつ予測できないものであるがゆえに、逆に、予測できないことを起こすことは可能である。もちろん、何かを起こすにはリスクが伴う。しかし、それは合理的な行動である。
何も変わらないという居心地のよい仮定に安住したり、ほぼ間違いなく起こることについての予測に従うよりも、リスクは小さい。
未来を築くために、まず初めになすべきことは、明日何をなすべきかを決めることではなく、明日をつくるために今日何をなすべきかを決めることである。
出発点としては、たがいに保管関係にある二つの方法がある。
第一に、経済や社会の断絶の発生と、そのもたらす影響との間の時間的な差を発見し、利用することである。すなわち、すでに起こった未来を予期することである。
第二に、ビジョンを実現すること、すなわち自ら未来を発生させることである。
○ 「すでに起こった未来」を探せ
すでに起こった未来は必ず機会をもたらす。
すなわち、社会、知識、文化、産業、経済構造における変化である。
しかも、それは一つの傾向における小さな変化ではなく、変化そのものである。一つのパターンのなかにおける変化ではなく、パターンそのものの断絶である。
もちろん、すでに発生した変化がもたらす影響を予期して、資源を投じることには、不確実性とリスクを伴う。だが、そのリスクは限られている。影響がいつ現われるかを正確に知ることはできないかもしれないが、影響が現われることについては確信をもてる。
その影響を、役に立つ程度に描くこともできる。
○ どこに「未来」を探すか
すでに起こった未来は、体系的に見つけることができる。
第一に調べるべき領域は、人口構造である。
第二の領域は、知識の領域である。
第三の領域は、他の産業、他の国、他の市場である。
第四の領域は、産業構造である。
第五の領域は、企業の内部にも、すでに起こった未来を見つけることができる。そこにも、基本的かつ不可避的な変化であって、影響がまだ現われていない事象を発見するための鍵がある。
そのひとつが、企業内の摩擦である。
何かを導入したとき、もめごとが起こる。
新しい活動が組織内に変化を引き起こし、すでに受け入れられているものと対立する。すなわち、知らずして急所に触ってしまう。
競争相手が、達成された目的をさらに達成すべく相も変わらず同じ努力をしているとき、目的が達成されたことを認識し努力の方向を転換した企業が、明日のリーダーシップを握る。
この続きは、次回に。