ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 20
□ 〝予期せざる成功と失敗〟を糧にせよ
「人智には限りがあるし、たかが知れたものなのだ。人間が予期しえなかったもの、
見てとれなかったものに目をつけることが、この〝予期しない成功・失敗〟を糧にして
イノベーションを展開するカギである。
とかく経営者は、おのれを過信するあまり、自分たちが見落としていたものを容易には
認めようとしない傾向があるが、これはナンセンスである。
中国のいにしえの知恵者は「君子豹変す」と言ったが、有能な経営者もこの知恵を、
今こそ想い起こさねばならない」
□ 組織はますます水平化する
さて、ドラッカーは、企業の使命を達成する点において、組織というものがもつ意義を
きわめて高く評価する。
すなわち、組織活動の生産性と効率性をとくに重視するという意味である。
その背後には、次のような要因がある。
① 資源の効果的な結合によってしか成果は上げられない。
② 組織の内において発生するのはコストのみであり、成果は外(市場)でしか
上げられないこと。
③ 人間もモノも、重点的に集中化と適切な方向づけをしないかぎり霧散霧消してしまい、
業績は上がらないこと。
④ さらに、これまでの筋肉労働中心から知識労働中心へと移り変わるにつれて、
目に見えにくい頭脳労働を管理するには、使命→目的→目標(ゴール)を明確にして
徹底化することが肝要なこと。
⑤ しかも、ホワイトカラーの生産性は、他からの強制ではなくて、自主的に関心を持って
自己投入しコミットすることによってしか上がらないこと。
⑥ そして、各種の専門家からなる集団が、現代組織の基本成員となってくるので、
これらのスペシャリストやプロフェッショナルをどううまくまとめあげていくかが、
今後のリーダーシップのポイントとなること。
⑦ さらに、異文化をまとめあげるべきグローバルな経営組織において、異質の発想を統合し、
しかも、女性の台頭といった異質なカルチャーを組織内になじませていくことが、
いっそう強く要求されること。
⑧ そのうえ、OAの発想や顧客へますます迅速に対応することが求められるようになると、
上からの指令を下へ伝えるだけの旧来の〝情報リレー型〟ミドルは不要となり、
組織はいよいよ水平化し平準化していくこと。
□ オーケストラ型組織かコンボ型組織か
ドラッカーは、高度のスペシャリストを指揮するには、これからの経営者は
優れたコンダクターでなければならないという。
第1オーボエ事業部長とか、第2オーボエ部長などというものはいないし、いらない。
ことオーボエにかけては、いずれも第一人者のスペシャリストであるのだから、
彼らがリーダーと直結していればいいのである。
その集団を成り立たせている共通の靭帯が楽譜という情報である。
これからの経営者は、総譜を書き、いかにしてオーケストラから美しい音色と
ハーモニーを引き出すかが責務となる—-このようなドラッカーのたとえに、
ひとつの未来型組織の大事なあり方が示唆されている。また、各人が自由な
発想でクリエイティブに曲を展開する小編成のコンボでいくのもよい。
フランチャイズ・チェーンなどはそうしたコンボ型のネットワークであるとも、
ドラッカーは言う。
この続きは、次回に。