ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 45
第6部 ドラッカー式英語の面白さ
21章 ドラッカーの英語を解きほぐす
□ 最も理解しにくい「ビジネス」という語
ドラッカー経営学の起点でありながら、最も理解されていない第1の言葉は、
business(ビジネス)ではないだろうか。
Businessは、「事業」とも「企業」とも訳され、また、そのまま「ビジネス」として使われるが、
ドラッカーはこれを不毛な空理空論ではなく、いわばoperational(操作的)な形で明確化すべく、
まずそのpurpose(目的)から問う。
そしてビジネスの目的は to create a customer(顧客の創造)であること、さらに昨日として
marketing(マーケティング)とinnovation(革新)の2つを挙げている。
組織体としては、教会や軍隊や学校や国家と違い、財やサービスをマーケティングするところに、
そのユニークさを見出している。
そして、ビジネスの革新機能は、「それまでとは違った経済的満足を提供すること」であるとし、
それを遂行するためには、富を生み出す諸資源の生産的活用(productive utilization of wealth-
producing resources)を唱える。しかも、この企業者からの発想としての
What is our business? (ビジネスとは何か)という問いへの答えは、facts(事実)から
出てくるものでなければ、what every knows(周知のこと)から自然の帰結として
導き出されるものでもないとして、never one right answer(たった1つの正解などない)ということを
知らなければいけないとする。
すなわち、事業とは、ひとつの判断(judgement)であり、純粋のdecision(意思決定)をすべき
テーマであるという考えをとる。
□ ビジネスとプロフィット
第2の大事なポイントは、その利益・利潤(profit)とのかかわりについてである。
通常ビジネスは利潤の追求やその極大化(maximization of profit)として理解されているが、
ドラッカーはその定説を完全にくつがえしてしまった。
ここにドラッカー経営学の革新性が存在するのである。
ドラッカーはprofit や profit motivation(利潤動機)の存在を認めつつも、profitをして
ビジネスの目的ではなく、結果(result)であるとした。すなわちprofitは業績(erformance)の
尺度(yardstick)であり、鼎の軽量を問うもの(test of performance)なのである。
利潤や収益力や利益性(profitability)を重要視しつつも、これの意味づけの価値転換を
している点をよく理解しないと、ドラッカーのビジネス論は理解しにくくなる。
Profitを原因(cause)ではなく、result(結果)として、つまりresult of the performance of
business in marketing innovation and productivity(マーケティングと革新と生産性における
企業の遂行活動の成果)とした点をよく味わうことが、ドラッカー経営思想の掌握にとって
不可欠な関門なのである。さて、このperformance という言葉は、日本語にはきわめて訳しにくい。
というのは、result—-成績、業績、結果、成果へ傾斜した側面と、それを生み出しうる
potential(潜在力)やpower(顕在力)、ability,capability(能力そして性能)、さらに遂行ないし
この達成中のプロセス(process)や行動(ability,behavior)——-といった
3つの側面が混在しているからである。
この続きは、次回に。