知識ゼロからのイノベーション入門-フェイスブック③
第5話 楽しさを保つには、躍進を抑える時期を持つ。
・ 急成長は負担増でもある
2004年5月、フェイスブックは34大学で運用され、ユーザーは10万人に迫っていた。
ザッカーバーグはこの頃、サーバーを頻繁に訪れ、10倍の数のユーザーに対応できる能力を
常に維持しようと努めていた。
ジョナサン・エイブラムが開発した一般ユーザー向けソーシャルネットワーク「フレンドスター」の
二の舞を恐れたからである。
2003年2月にスタートしたフレンドスターは1ヶ月経たないうちに数百万人のユーザーを獲得し、
「次なるグーグル」と呼ばれた。
ところが、ある時期からサーバーがどんどん重くなり、1ページを読み込むのに長い時間が
かかるようになって失速してしまったのだ。
・ 不満ならユーザーは瞬時に見放す
フレンドスターの能力がユーザー数増加の速度に追いつけなかったことが原因だった。
ザッカーバーグは「十分なサーバーが容易できず、ユーザーの満足が得られなかったら、
そのサービスは瞬時に見放される」と警戒を緩めなかった。
フェイスブックはユーザー数をいくらでも増やせるが、ザッカーバーグは、資金のこと、
サーバーのことなどを考えながら慎重に拡大していった。
「やみくもに資金を調達して規模を拡大するやり方はしなかった。
初期の段階では、ある程度意図的に成長速度を抑えていた」と語っている。
成長を抑えたことが、次の爆発的な成長へとつながっていく。
第6話 仕事を仕事と思わないのがイノベーター。
2012年に提出した株式公開の目論見書の中でザッカーバーグは、フェイスブックの文化を
「ハッカー文化」と表している。
ハッカーとはネットで不正を働く犯罪者ではない。
高度な知識を持ち、人が思いつかないような創造的な仕事をする人をさす。
ザッカーバーグは、ハッカーそのものだった。仕事に熱中するあまり恍惚状態となり、
隣の人間と会話もしなかったという。
フェイスブックでは6〜8週間ごとにマラソンならぬ「ハッカソン」が開かれ、
ザッカーバーグ自身も参加したりする。
ハッカソンで求められるのは、素晴らしいものを一晩でつくりあげる能力だ。
「それはフェイスブックの人格となっている」と言っている。
若きハッカーたちの猛烈な働きが、フェイスブックの一端を担う!
第7話 タイミングは成功の必要条件。逆らうな、手放すな。
・ ユーザーがなければ成功もない
今日のソーシャルネットワークは、1997年の「シックスデグリーズ」に始まる。
本格的なソーシャルネットワーク時代を開いたのは2003年の「フレンドスター」だ。
以後、「リンクトイン」「マイスペース」などがサービスを開始した。
すでにサーバーは安くレンタルできたし、ソフトのライセンス料も安くなっていた。
何よりインターネットユーザーが爆発的に増えていた。
・ 機が熟しつつある時が絶好機
フェイスブックは、まさに機が熟しつつあったときにスタートしたのだ。
しかも乱立する他のサービスにはない強みがあった。実名に徹底してこだわるリアルさ、
シンプルで使いやすいクールさ、それにハーバード大学の学生だけを対象にスタートしたという
ステータスの高さである。
ザッカーバーグは自分のビジョン通りに進む行動力も持っていた。
それらをまとめて、ショーン・パーカーは「天才だけでは成功できない。
運もよくなけりゃダメなんだ」と言い、モスコヴィッツは「彼は絶好のタイミングで
絶好の状況に現れた」と評している。
この続きは、次回に。