お問い合せ

認知症はもう怖くない ㉕

脳を鍛えよう!

 

記憶には短期記憶と長期記憶があり、短期記憶を長期記憶として定着させるためには、繰り返し

思い出すことが必要不可欠です。

情報は詰め込む(記憶)だけでなく、正しく引き出せなければ意味がありません。この引き出す行為、

つまり思い出すことで、情報は短期記憶から長期記憶へと移行され普遍的な記憶として保管されるのです。

「思い出す」訓練として、毎日寝る前にその日あったことを思い出す(日記をつける)ことを

おすすめします。最低限のこととして、その日の食事の献立を思い出してみてはどうでしょう。

人の名前などを記憶する場合は、相手の顔や特徴を含めた情報も同時に記憶することで忘れにくく

なります。何かに関連づけて覚えることで、文字などの情報だけでなく、映像・音・言葉などの

情報に分けられて保管されるためにその記憶を引き出せるようになるのです。

また、書いたり、声を出して読むことにより記憶力はアップします。

こうすることで、右脳の働きが活発になり、情報の保管容量(記憶容量)が拡大するためと考えられて

います。

右脳の機能を高めるために、将棋・囲碁、歌を歌う、絵を描くこと、料理をすることなども推奨します。

 

「歩くこと」はすでに結果も出ている認知症の予防策

 

「万歩計」をお持ちの方も多いと思うのですが、この名称は、非常に理にかなった、まさに「言い得て妙」

なるネーミングであることに驚かされます。

それというのも、「歩く」ことが健康にいいのはだれもがわかっていることですが、この「1万歩」には

大きな意味があるからです。

認知症予防のひとつとして、運動やスポーツによって、日常の身体活動を活性化させることの

有用性が注目されています。

アメリカの高齢女性1万8766名を対象に、自記式による身体活動量と二年間の認知機能の変化を

調査した疫学研究の結果、低強度のウォーキングを週に1.5時間以上実施している女性は、

週当たり40分以下の人と比較して、認知機能の低下が有意に少ないことが報告されています。

同様に、日常生活での歩行を含むウォーキングの距離と、六年から八年の長期間にわたる認知機能の

変化を検討した研究においても、週当たりの歩行距離が少ない高齢者は、多い高齢者よりも、

大きく認知機能が低下していました。

また、一日の平均歩数が7500歩未満の高齢者は、7500歩以上の高齢者と比較して、六カ月後の

視覚性記憶の低下が大きいことが確認されています。もちろん、この「7500歩」はひとつの目安で、

年齢や体力によって個人差があることは言うまでもありません。

しかし、1万歩を歩くとなれば、多くの人にとって効果が現れることになるでしょう。

「万歩計というネーミングは言い得て妙」と書きましたが、理由はここにあったのです。

このように歩いている人と歩いていない人の差がはっきり出ています。

「歩くこと」が認知症の予防になることは統計学的にもはっきりしているのです。

ここまでの結果が出ているものは「歩くこと」の他には、まだありません。

私も、とくにあまり外に出ないという患者さんには、「歩くこと」を習慣にするようにすすめています。

歩くことになれてきたら、徐々に歩くスピードを上げていくのもいいでしょう。

 

 

この続きは、次回に。

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