『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』③
04 「1枚」で自分の頭の中を「見える化」する
実際に「手で書いて」みると、本当にわかっているかどうか、どれくらいわかっているかが
よく「見える」のです。つまり、ものごとの理解度がわかる。
紙に書き出すと「わかる」「わからない」が見えてくる
自分が作り上げた「1枚」は、自分の頭の中そのものでした。
中途半端にしか理解できていない箇所については、それが如実に表れます。
また、1枚に収まる量に絞り込んでいく段階で、情報の重要度を正しく理解しているかどうかも
わかります。
正しく理解していれば重要な情報が残り、それ以外の情報は削ぎ落とされます。
つまり、上司は「1枚」の書類を見つつ、実は、その内容を通して私の頭の中を見ていたともいえます。
「1枚」を見て、私がこの仕事についてどこまで理解しているか、どこがわかっていないかを
チェックしていたわけです。
トヨタの有名な言葉に「見える化」というフレーズがありますが、私がトヨタで仕事を経験する中で
その言葉の意味合いをもっともよく実感したのが、まさに紙1枚によって社員の頭の中を
「見える化」する場面でした。
05 「トヨタの1枚」のわかりやすさの秘密
決定的な違いは「ひと目でわかるかどうか」
「トヨタの1枚」の3つの特徴の1つである「一覧性」は、わかりやすく伝えるための非常に
重要なポイントです。
「紙1枚に収める=一覧性を持たせる」だけで、何枚にもわたる書類より、ずっと伝わるものに
なるのです。さらに、A3用紙は、図表やグラフを入れるのに十分、かつ見やすいサイズです。
「百聞は一見にしかず」で、どんな言葉を重ねるよりも、見せたほうが、すばやく正確に
伝わる場合があります。
「読んでわかる」ではなく「見てわかる」ことがポイント
また、わかりやすさをさらに高めるうえで役立っているのが、残り2つの特徴である「フレーム」と
「テーマ」です。フレームとテーマがあることで、読み手は「この部分には何が書かれているのか」が
ひと目でわかります。また、読む前にある程度その先がどのような内容なのか見通しがつくため、
読みやすさもアップします。
さらには、テーマがついていることで情報の取捨選択もしやすくなります。
「この部分とこの部分は大事だから特に注目しよう」といった、メリハリのある読み方が
できるのです。このように、「一覧性」「フレーム」「テーマ」という3つの特徴が忠実に
入っているからこそ、「トヨタの1枚」は、「読んでわかる」ものではなく、「見てわかる」もの、
ひいては「伝わる」ものになります。
「3秒以内」で相手に決断をくだしてもらうには?
豊田社長は「決断は3秒以内で行う」という独自のルールを守っているそうです。
これはつまり、部下の立場からすれば、それくらい短時間で決断を下せるような「1枚」を
用意しなくてはいけない、ということです。
06 「1枚」を活用すれば会議の無駄がなくなる
まずは、会議の書類です。
私なりに気づいたトヨタの会議における書類の役割は主に2つ。
「会議の無駄を減らす」ことと、「会議をスムーズに進行させる」ことです。
人は「空白のフレーム」があると埋めたくなる
会議で出た結論を書き込むための「空白のフレーム」をあえて用意する、という場合もあります。
人は目の前にフレームがあると、そこに集中し、その中を「埋めたい」という心理が働くのです。
できあがった「1枚」がそのまま議事録になる
会議の書類にフレームを設けておくと、参加者はそれぞれ上部に記載されたテーマに応じて、
枠内の情報に意識を向けることができます。
さらに、場合によってはあえて、空白のフレームを用意することもあります。
すると、枠の中を埋めようという心理が働くので、議論の方向も自然と「空白を埋める内容=
目的に沿ったもの」へとまとまっていきます。
議論が脱線しづらくなり、たとえ脱線したとしても、フレームがあることですぐに修正され、
再び議論が本来の目的に向かって進むのです。また、会議が終わったあとに議事録を書く必要が
ある場合にも、この空白のフレームを活用していました。
議論をしながら、「ここが今日の会議のポイントだな」と思う意見が出ると、その場でそれを
フレームの中に書いてしまうのです。
こうすれば、できあがった1枚の書類がそのまま議事録となります。
わざわざ会議のあとに別の書類にまとめ直す、という手間を省くことができます。
あらかじめフレームを書き込んだ「1枚」を用意しておけば、会議がダラダラと無駄に長引かないうえに、
会議終了とともに議事録が仕上がるという、一石二鳥の効果が得られるわけです。
会議の書類に、空白のフレームを入れる——-。
たったこれだけで、手元の書類が「機能する1枚」になります。
あなたもぜひ、次に自分が参加する会議に取り入れてみてはいかがでしょうか。
この続きは、次回に。