お問い合せ

ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 ⑫

✔️ 「両利きの経営」が実践できる企業は、業績が良い

 

したがって、イノベーションを目指す企業には、コンピテンシー・トラップに陥らないように、

「知の深化」を継続しながら、「知の探索」を推し進める組織体制・ルールづくりが求められます。

図表でいえば、実践の矢印のように、バランスよく知の探索と深化をすることです。

実際に、世界の経営学の実証研究では、「イノベーションにたけた企業ほど、この両利きの経営を

うまく実現している」と言った結果が発表されるようになってきています。

代表的なものに、米ミシガン大学のゴーダム・アフージャと米スタンフォード大学のリタ・カティーラが、

2002年に「アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル」に発表した研究があります。

彼らは世界のロボット企業124社の特許データから各企業の「知の探索」と「知の探索」を計測しました。

そして統計分析の結果、知の探索と深化を同時に実現している企業ほどイノベーティブな製品を

生み出しやすい、という結果を得たのです。

これはまさに、両利きの経営の効能を示す結果です。

では、いくつかの事例から、さらにその示唆を探っていきましょう。

 

✔️ 日本の経営者も「探索」をしていた

 

両利きの経営を実現するために大事なことは、まずはビジネスパーソン・経営者自身が「知の探索」を

怠らないことでしょう。

イノベーションの出発点は知と知の新しい組み合わせであり、それには知の探索が欠かせないからです。

実際、日本を代表する企業家の方々が革新的なビジネスモデルを生み出した背景には、彼らの

「知の探索」活動があることが少なくありません。

 

※   省略致しますので、購読にてお願い致します。

 

革新的なビジネスモデルを生み出す一つの方法は、このように「内容的、地理的、時間的に

遠いところから得た知」を、自分のいま持っている知と組み合わせる「知の探索」なのです。

 

✔️ 世界で注目される「両利きの組織」

 

ところが先に述べたように、企業は組織としても知の深化に傾いてしまうという、コンピテンシー・

トラップが「組織の本質」として備わっています。

したがって、組織としてのバランスよく両利きの経営を実現するための施策が重要です。

両利きのバランスをとる手段は様々あるのですが、ここでは、イノベーション研究の第一人者である、

米ハーバード大学のマイケル・タッシュマンが米スタンフォード大学のチャーチルズ・オライリーと

2004年に「ハーバード・ビジネス・レビュー」(HBR)に発表した組織構造についての事例分析の

論文を紹介しましょう。

同論分でタッシュマンとオライリーは、企業が新しいビジネスを試みる(知の探索をする)ことを

支える仕組みとして、新規事業担当部署を中心とした「両利きの組織体制」の構築を提案しています。

 

✔️ イノベーションを起こして復活した米USAトゥデー

 

それは、新しい事業を探究する部署には、(1)そのビジネスに必要な機能(例えば開発・生産・営業)を

すべて持たせて「独立性」を保たせること、(2)他方でトップレベル(例えば担当役員レベル)では、

その新規部署が既存の部署から孤立せずに、両者が互いに知見や資源を活用し合えるよう

「統合と交流」を促すこと、が重要であるという主張です。

すなわち、新規事業部署にはなるべく「知の探索」を好きなようにやらせて、他方で「知の深化」は

上層部で既存事業分野との融合を図ることで実現すべきだ、ということなのです。

タッシュマンらは、両利きの組織体制の成功事例として、米大手新聞社のUSAトゥデーを

取り上げています。

 

※   省略致しますので、購読にてお願い致します。

 

この論文でタッシュマンらは、このように革新的なビジネスを生み出した企業の35の事例を分析し、

その多くが両利きの組織体制をとっていたと結論づけています。

 

 

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る