IoTビジネス入門 ⑭
■ TESLAが切り開くIoT時代のクルマ
「TESLA(テスラ)」というクルマをご存じでしょうか?
米国シリコンバレー発の電気自動車です。
このメーカーは、もともとクルマメーカーではなく、代表のイーロン・マスクは電子決済企業である
PayPalを大きくしたことでも有名な起業家です。
TESLAは、電気自動車でスポーツカーレベルの性能を引き出しました。
スポーティーなボディと、エンジンで動くスポーツカーに負けない性能を見せることで、電気自動車の
未来を見せ、世界中のファンをつくりました。
TESLAは、インターネット経由でパソコンのOSをアップグレードするように、クルマに搭載されている
コンピュータをアップグレートすることができます。
クルマには常時通信機能が搭載されており、最新の状態を保持することができるのです。
一見するとスボーティなイメージが先行しがちなTESLAですが、実は、このクルマを見るとIoT時代の
クルマの在り方が予感されます。
■ パーソナルモビリティ時代の予感
TESLAはボンネットを開けても、トランクを開けても空洞です。
通常、多くの自動車は、ボンネットの中にはエンジンが入っています。
特に、スポーツカーレベルの性能を引き出そうとするとエンジンのサイズも大型化するものなのですが、
TESLAにはこれがないのです。
「クルマを動かすには、タイヤが回るモーターがあれば良い」という発想からできているこのクルマには、
大きな馬力を出すのに通常必要な、大きなエンジンが不要なのです。
TESLAは、未来のクルマのカタチを示すだけで市場がついてくることができないと考えたのか、カタチは
よく見かけるスボーツカーに落とし込み、性能を比較・評価しやすいように、世界のトップスポーツ
カーと比べて見せたのです。
しかし、本当は大きな車体などは必要なく、「もっと小型の機能的な電気自動車がつくれる」のです。
「モーター+バッテリー」という構成でクルマがつくられるようになると、これまで特殊な技術が
必要であったエンジン部分の製造が不要になります。
つまり、電気自動車の市場が立ち上がることで、クルマ業界への参入障壁はかなり下がるのです。
するとクルマの未来はどうなるでしょう。
特殊な技術はいらない。モーターとバッテリーが入るサイズがあればクルマはつくれるようになるので、
どんどん小型化が進み、価格も安くつくれるようになるでしょう。
その結果、よりパーソナルな乗り物、つまり1人1台、1人乗りの「パーソナルモビリティ」となって
いくことが予測できます。
クルマがバーソナルモビリティになると、スマートフォンレベルの利用台数が見込まれ、参入企業が
一気に増えるはずです。
その結果、クルマの価格はどんどん下がるでしょう。
「iPhone」は10万円ほどですが、クルマもそれくらいまで価格が下がる日が来るかもしれません。
この安価な1人1台のパーソナルモビリティが、自動運転の未来には欠かせません。
これが実現すれば、自動運転カーの普及は、一気に加速することでしょう。
この続きは、次回に。