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書籍「はじめよう シェアリングビジネス」⑨

COLUMN—– 認証制度は官民の「共同規制」、柔軟性と安心を両立

                        松田 昇剛

 

シェアリングエコノミーの事業者に対する認証制度が整い、2017年6月に運用が始まった。

同制度を整備した際の最大の特徴は、政府と民間による、いわば「共同規制」となった点である。

シェア事業は様々な社会的課題に対応できると期待されるなか、いち早く柔軟かつ実効性の高い

ルールを作ることにつながった。

 

欧米やアジア各国に比べ、日本におけるシェア事業の展開は遅れをとっていると指摘される。

その原因の一つは、安全性・信頼性に対して不安を感じる人が多いということだ。

不安を払しょくして事業を推進するためのルール作りが求められていたが、基本的に個人間の

取引の仲介という業態であるのに加え変化が激しく、分野も多岐にわたる。

このため、事業者を法で一律に規制するのは難しい。

 

一方、業界の自主規制ではお手盛りになりやすく、信頼度が低くなってしまう問題があった。

そこで今回用いられたのが、その中間とも言える手法だ。

 

まず16年7月、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室がシェアリングエコノミー検討会を立ち上げ、

有識者や事業者の代表を集めて安全性・信頼性確保のための方策を検討。

同年11月に事業者が守るべき事項などをまとめた「モデルガイドライン」を示した。

業界団体のシェアリングエコノミー協会(東京・千代田区)はガイドラインに沿って自主ルールを決め、

事業者の認証制度を創設した。

こうした官民の協力による共同規制の手法は、英国などで用いられてきた。

日本でも徐々に活用され始めており、ネットの書き込みの削減を可能にする「プロバイダ責任制限法」の

運用ルールを示すガイドライン作りなどで活用され、効果を発揮した。

従来と異なる新しいビジネスが興り、変化が激しい環境において、法律に比べ緩やかなルールであり、

事業者の知識も活かされる共同規制は利点が大きい。

 

国内シェアリングエコノミーの一定のルールが整った現在、次に目指しているのは、国際標準作りへの

参画である。カナダなどと組んで、国際標準化機構(ISO)における規格化を提案する予定だ。

実現すれば、日本の事業者が世界で展開する足掛かりとなる可能性もある。

シェアリングエコノミーは政府の成長戦略である「未来投資戦略2017」に盛り込まれた。

認証制度の整備で、シェア事業推進はスタートラインに立った。

今後もビジネス環境の大きな変化にひるまずに挑むことが、企業にも行政にも求められている。

 

 

この続きは、次回に。

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