シェア < 共有 > からビジネスを生みだす新戦略 ⑥
□ ゴミをデザインする
✔︎ 計画的陳腐化というコンセプトを最初に思いついたのは、経済学者でも製造ローカーでもなく、
広告代理店でもない。マンハッタンの不動産ブローカーだ。
1932年、バーナード・ロンドンは、「計画的陳腐化による恐怖の終焉」と題した20ページの
パンフレットを作成した。
ロンドンは、自動車でも、櫛でも、船でもビルでも、すべての製品に「リース期間」を
定めるための政府機関を創設するよう提案した。
リース機関が切れた製品は、「法的に死んだもの」とみなされた。
消費者には、次のどちらかを選べるようにする。
製品を廃棄して新品を買い直し、その購入額の一部を補てんしてもらうか、罰金を払って
期限切れの製品を使いつづけるか。
ロンドンのアイデアには法的な強制力はなかったが、50年代の製品デザイナーは提案の
趣旨を取り入れ、「ゴミになるもの」をデザインするようになった。
□「あとひとつ」症候群
✔︎ ほとんどの人はだいたいのものを一つは持っている。
ということは、すでにあるものを「もうひとつ」買わせるための言い訳がいる。
こうして「過剰な選択肢の原則」が生まれた。
✔︎ 心理学者のジョナサン・ハイドは、私たちにもできる簡単な実験を行なった。
次に挙げる言葉のなかで、いちばんピンとくるものをひとつ選んでみよう。
その言葉とは、制約、制限、障壁、選択の四つだ。
たぶん、被害者と同じく、あなたも「選択」を選ぶだろう。
最初の三つはネガティヴなイメージがあるからだ。
消費者なら、だれしもたくさんのなかから選ぶ方がいい。
たとえ選択肢にそれほど違いがないとしても。
✔︎ 家や生活がモノであふれればあふれるほど、私たちの気持ちは重くなり、身動きが
取れなくなる。
ニール・ローソンが『オール・コンシューミング(All Consuming)』で言うように、
「消費しつづけることで、ますます消費者以外の何ものにもなれなくなる」のだ。
それだけではない。人生でものを溜め込むことに時間と空間を使えば、その分だけ他者の
ために使う余裕がなくなる。
物質的豊かさの追求は、人間のもっとも基本的な社会的欲求、つまり家族や地域の絆、
個人の情熱、社会的責任と本質的に相反する。
それなのに私たちは、モノを次から次に手に入れて溜め込むことで、こうした欲求を
満たせると考えていた。
ハイパー消費の時代を「自閉的資本主義」と表現する評論家もいる。
難しい呼び名はともかく、このハイパー消費という病気について二つだけはっきりして
いることがある。
まず、お金—-そしてお金で買えるものを手当たり次第溜め込むこと—-イコール幸福だという
考えが、ハイパー消費の原因だということ。
そして、この病気は治せるということ。
コンシューマリズムのシステムは、現代の生活において動かしがたい現実のように見える。
でも、そうではない。
このシステムが人工的につくられたということは、その力を別の形に変えれば、より健全で
維持可能なシステムができ、モノを買う以上に満足できるゴールをもてるということだ。
この続きは、次回に。