書籍「10年後の自分」を考える技術 ⑫
✔ うまくいったら「自分のおかげ」、うまくいかなかったら「他人のせい」
さて、人の年齢は「ほぼ確実にやってくる未来」の典型だという話を
してきたが、他にはどんなものがあるだろうか?
以下の3つのカテゴリーで考えてみるとわかりやすい。
● いま起きていることが単純に未来に投影されるもの
● モノゴトの発生の順番から推論できるもの
● 制限や制約の存在から推論できるもの
「いま起きていることが単純に未来に投影される」というのは、先ほど
説明した人口の問題が典型である。
今年の赤ちゃんの数が、10年後の10歳児の人口に投影されるというのは、
誰でもイメージしやすいだろう。
また、いま問題となっている年金の問題も、人口問題と密接に結びついており、
何も改革がなされなければ、今の若者が将来大きな負担を背負わされる
ことになるのは明らかだ。
「はじめに」で挙げたコンピュータの2000年問題も、そうなることは
最初からわかっていたにもかかわらず、「まだ当分先のことだから」
「いつか誰かが解決してくれるに違いない」ということで、やはり問題は
先送りされた。
「いま起きていることが単純に未来に投影される」タイプの落とし穴は、
その未来が「遠い未来」の場合、問題を先送りする誘惑と常に戦わないと
いけない、ということだ。
人間は、うまくいった場合はみんな自分の手柄にしがちなのに対して、
うまくいかなかった場合には、責任は自分にないという態度を取りがちだと
いうことだ。
それが人間の弱さだし、人間らしさとしては、私も嫌いではない。
しかし、意思決定的には、このバイアス(偏り)はまずいだろう。
特に、他人のせいにしても始まらない自分の人生については、なおさらそうだ。
✔ 「順番」で考えるクセを身につける
さて、「ほぼ確実にやってくる未来」の2つ目のカテゴリー「モノゴトの発生から
順番から推論できるもの」とは何か?
典型は「発明と実用化の関係」である。
どこかで革新的な発明(インベンション)があれば、その後、それを活用した
技術革新(イノベーション)が起こり、それが実用化のレベルまでくると、
いつかは私たちの生活に大きな影響を及ぼす。
そんな順番の関係だ。
このように、発明と実用化などの「順番」から未来が推論できるようなことは
意外と多い。もちろん、「順番」は発明・発見とは限らない。
社会問題や規制・技術などにも「順番」の話は当てはまる。
詳しくはこのあと具体的に説明するが、要は「Aが にBなったから、つぎは
Cになるんじゃないか?」といった感覚で考えていけばいいだろう。
「10年という時間軸のなかではほぼ確実にやってくるものもある」という
考え方をしましょう、と言っているのだと理解してほしい。
✔ A、Bと来れば、つぎはCになる
他の「順番」の話としては、たとえば「社会問題の広がりとその対策」が
あるだろう。
社会問題が大きくなれば、法整備などの対策は必ず実施される。
それには必ず数年かかるし、長い場合には十数年必要なこともある。
そういった議論が始まる「兆し」をつかんでいれば、その行く末はある程度
想像することができるのだ(そうした法整備や規制がどれほどの効果を
持つものなのか、という論点はもちろんあるが、それは別の話である)。
1970年代に顕在化した小・中・高教育の記憶偏重型「詰め込み」教育問題(問題に
対して、2000年代前半にゆとり教育が実施されたものの(対応)、学力不安(新たな
問題)が広がり、実質的に「ゆとり教育」の方向性が改められたこと(新たな
対応)なども、同じようなパターンと言えるのではないだろうか。
今後、教育は、社会のグローバル化や対人コミュニケーション力ニーズの拡大
という「新たな問題」に対応する方向で、変化していくのではないだろうか。
この続きは、次回に。