ブランディングが9割 ㊱
✔ もはや売って終わりの時代ではなくなった
スマートフォンの登場で、ここ数年ビジネスを取り巻く環境がガラリと
変わりました。
ブランディングは「商品価値」が重要とされた時代、「体験」が重要と
された時代を経て、現在では「共創」が重要な時代とも言われています。
つまり、企業側だけでブランドづくりをするのではなく、企業と顧客で
共にブランドを創っていくという時代です。
それはSNSの普及により、企業発信だけだった以前と違い、消費者側から
発信できるようになって格段の情報量が増え、使用被写の購買行動が劇的に
変化したことが、大きく関係していると言えます。
消費者が購入した後に、ブランドはSNSで発信するように影響力のある
消費者とどう関係性を築いていけるかが重要になってきているのです。
フィリップ・コトラーは著書『コトラーのマーケティング4.0』において、
以前の消費者の購買行動「AIDMA」に変わる新たな行動プロセスを、
スマートフォン時代のカスタマー・ジャーニー「5A理論」というフレーム
ワークで再定義しました。
● 購買決定プロセスAIDMA
注目(Attention)—その商品の存在を知る。
興味(Interest)—–興味を持つ。
欲求(Desire)—–欲しいと思う。
記憶(Memory)—–記憶する。
行動(Action)—–購入する。
● 5A理論
認知(Aware)—友達に勧められたりネット情報を見たりして、その商品を
認知する。
訴求(Appeal)—-欲しいと思い、好きになる。
調査(Ask)—友達に聞いたりネットで調べたりすることで、良いと確信する。
行動(Act)—購入し、利用する。
推奨(Advocate)—非常に良いと思ったので使いつづけ継続的に購入し、
家族や友人にも推奨する。
AIDMAが「購入してもらうこと」をゴールとしていたのに対して、
SNS普及後の5A理論では、「推奨してもらうこと」をゴールとして
います。
企業側からの「我々を知ってください。そして、買ってください」という
訴求の時代が終わり、共創ブランディングの時代は、「購入者が購入後に
自発的に推奨したくなるようなコミュニケーションを、いかにブランド側が
取れるか」という時代になってきているのです。
・購入後の密着性の高いコミュニケーション実施例
アメリカのD2C(direct to Customerの略。メーカーが直接お客さんとEC
サイトなどで取引を行うビジネスモデルのこと)のスーツケースブランド
「AWAY」をご存じでしょうか。2015年にニューヨークで生まれ、中心価格が
1つ2500ドルと安価ながら、質と世界観で売っているブランドです。
RIMOWAやSamsoniteなどの高級スーツケースとは一線を画し、創業3年で
売上400億円超となり、現在大成長を遂げています。
そんなAWAYの成功要因の一つは、購買後のコミユニケーションのうまさだと
言われています。AWAYでは「モノ」としてのスーツケースを売るのではなく、
「旅のある生活」という価値を提供し、購入者に対して、SNSや自社出版の
雑誌(Here)を通じて発信し、積極的にコミュニケーションを取っているのです。
実際、インスタグラムには、スーツケースが写っていない画像も投稿されて
おり、あくまで「旅のある生活」という世界観を表現しています。
また、50万人を超えるフォロワーも積極的に発信し、さらに公式インスタ
グラムでは、投稿に対してほぼすべて返答しているというから驚きです。
このようなコミュニケーションをとることにより、ファンが増え、その
ファンが旅に関する同ブランドの関連商品を購入することで、さらに売上が
伸びているそうです。
今後もD2Cのブランディングからは目が離せません。
この続きは、次回に。