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Coffee Blake-10月8日(木) DX実現の課題(下)

2020.10.2付日本経済新聞 朝刊に掲載された「Analsis DX実現の課題(下)」に

興味が湧き、「代表のブログ」でご紹介したいと思います。

 

詳細は、インターネットで検索の上、ご覧下さい。

 

2020.10.8

 

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

 


 

Analsis

 

DX実現の課題(下)

価値創造という視点を持て

 

豊田裕貴 法政大学教授

 

『ポイント』

 

● DXで何をするかが不明確な企業が多い

● 業務の効率化だけがDXの目的ではない

● データに答えを求めずあくまでヒントに

 

 

✔  DXの目的を整理し、いくつかのポイントを指摘するのが本稿の目的である。

     DX(トランスフォーメーション)を導入するためには何をすればよいか—。

 

「DXで何を実現したいか」と聞き直すと、具体的なレベルでの答えが

返ってこない。

 

共通の課題は、「DXが手段となってしまっている」と感じられることが多い。

 

● 2019年に経済産業省が出した「DX推進指標」におけるDXの定義は

 次の通りである。

 

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を

活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを

変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を

変革し、競争上の優位性を確率すること」

DXの目的を理解するには、やや抽象度が高い。

そこでDXの目的を「コトの流通」だと考えることをお勧めしたい。

 

流通とは、ギャップを埋める機能である。

流通が埋めるべきギャップは複数あるが、ここでは「距離のギャップ」と

「時間のギャップ」に着目してみよう。

日本は世界に名だたる流通機能を持ち、必要なモノを必要な場所に必要な

時間に届ける仕組みを構築した。この強みを生かさない手はないからだ。

この「モノ」を「コト」と置き換えると、DXで実現すべきことが明確になる。

例えばコロナ禍では、仕事をする場所のギャップ(自宅と職場)の解決を

必要とした。

 

リモートワークという仕組みは目新しいモノではなかったが、急激に

広がったのは、このギャップを埋める必要が高まったためだ。

このほかにも押印の廃止、共有すべき情報の共通書式化などは、仕事と

いう「コト」のギャップを解決する手段としてDXを活用したわかりやすい

例である。ギャップを埋めるべき「コト」を再考することこそ、第一に

取り組むべきである。

DXで重要なのは、「製品やサービス、ビジネスモデルを変革する」ことにある。

 

ビジネスモデルを変革するためには、顧客へ提供する価値自体に新規性が

求められることは言うまでもない。

ピーター・ドラッカーが「現代の経営」で指摘したように、ビジネスの

目的は顧客創造、つまり顧客が求める価値を生み出すことであり、マーケ

ティングとイノベーション(革新)がこの機能を担う。

そして、業務の効率化は、これらの目的を遂行し持続可能にするためには

重要であるが、価値創造自体をもたらしはしない。

DX導入を急ぐあまり、業務効率化のためのデジタル化のみを考えては

ならない。コスト軽減と価値創造は両立する視点であり、どちらかのみで

ビジネスを駆動できるものではない。

価値創造を考える上で重要となるのは、顧客が埋めたいギャップは何かを

整理することである。

業務の効率化によって作りだした余剰資源をこの点に投入することこそが

DXの成功の要因であり、効率化の目的である。

マーケティングの世界では、セオドア・レビットが例示した「ドリル

(手段)と穴(目的)」の話などのように、目的にこそ視点の中心を置くべきで

あるという話が繰り返し主張されてきた。

顧客は解決したい何か(課題)があり、それを解決する手段を探している

ということである。

 

✔ DXによって解決すべき顧客の「解くべき課題」を常に意識することが

     DX成功の前提条件である。

     この点に関連し、2つのキーワードを紹介したい。

 

一つは、ジョブズ・トゥー・ビー・ダン(JTBD)である。

 

JTBDは、米ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が

指摘した考え方である。

 

顧客は何を解決したいのかという視点を考えることなしに、革新的な価値の提案、

もしくはデータ活用はできないという指摘である。

ベストセラーになった「ジョブ理論」や「JTBD 顧客のニーズを見極めよ」は

その一例である。

もう一つのキーワードは、「価値創造」である。

 

顧客の解くべき課題の重要性がわかっても、それにはどんなものがあるのかを

整理しておくことなしに目的志向の発想は難しい。

 

エリック・アルムキストらの「顧客がほしいと思う30の『価値要素』は

一例である。

 

関連性を掘り下げていくラダリングという手法をもとに価値要素をもとに

価値要素を30に整理し、業界ごとの特徴を示している。

「簡素化」「コスト削減」「労力の軽減」など効率化に関連するものも

あるが、それらは価値要素の一部でしかない。

効率性関連以外の価値要素を踏まえてどうやってDXを展開するかといった

視点は、有効なヒントを提供するだろう。

最後にもう一つDXと切っても切り離せない「データ活用」についても

言及しておこう。

 

データ分析への過度な期待と誤った視点はDXを失敗に導く原因になり

かねない。

 

データとは特別なものではなく、過去を数値などで記録した歴史に過ぎない。

この数値としての歴史から有効な知見を得ようというのがデータ活用で

あるが、数学的な手法を使うがために、何か唯一の答えを導き出す道具

として期待している機運には、懸念を抱かざるを得ない。

過去のビジネス事例に学ぶケーススタディーでは、唯一の答えではなく、

多様な可能性とそれが正しいと考えられる根拠をストーリーとして考える。

データ活用も同じである。

データに答えではなく、ヒントを求めるという姿勢なしには、データから

新たな価値提案する視点は得られない。

デジタルというあくまで「コト」を電子的に記録したにすぎないものを

活用するには、ビジネスパーソンのみが持つ嗅覚の活用が必須である。

そのためにも、自分が提供してきた価値がなんであったのかを再考する

ことが、DX成功でも重要となる。

 

 

DXを実現するために

 

① 目的

       ↕︎ 「コト」のギャップを埋める

② 効率化                             ③ 価値創造

・効率化だけではDXの目的とは言えない。      ↓

・新たな価値創造こそがDXの真の目的である。    ↓

           ↓              ↓

                        ④ 課題の具体化

                           「JTBD」と「価値要素」への着目

                             (何を解決すべきか)

                                      ↓

⑤ 手段としてのデジタルフォーメーション

     ↑

⑥ データ活用の基本視点

  データに「答えを求める」ことに重みを置き過ぎない

     「ヒント」を求める視点を忘れない

   ↓

これら「手段と目的」の対応を意識し技術主導ではなく活用する側主導での

DX導入とそのシナリオ構築が成功のカギとなる。

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