「D・カーネギー 人を動かす」⑤
2. 笑顔を忘れない
● チャールズ・シュワップは、自分の微笑みには百万ドルの価値があると
言っていたが、ずいぶん控えめに評価したものだ。
彼の並々ならぬ成功は、もっぱらその人柄、魅力、人に好かれる能力
などによってもたらされたものであり、彼の魅力的な微笑みは、彼の
人柄をつくり上げる最も素晴らしい要素なのである。
● 心にもない笑顔—そんなものには、誰もだまされない。
そんな機械的なものには、むしろ腹が立つ。私は真の微笑みについて
語っているのである。
心温まる微笑み、心の底から出てくる笑顔、千金の価値のある笑顔に
ついて語っているのだ。
● ミシガン大学の心理学教授、ジェイムズ・マッコイ博士は、笑顔について
次のような感想を述べている。
「笑顔を見せる人は、見せない人よりも、経営、販売、教育などの面で
効果を上げるように思う。
笑顔の中には、渋面よりも豊富な情報が詰まっている。
子供たちを励ますほうが、罰を与えるよりも教育の方法として優れて
いるゆえんである」
笑顔の効果は強力である。たとえその笑顔が目に見えなくても、効果に
変わりがない。
● 笑顔など見せる気にならない時は、どうすればよいか。
方法は二つある。まず第一は、無理にでも笑って見ることだ。
一人でいる時はなら、口笛を吹いたり鼻歌を歌ったりしてみる。
幸福でたまらないようにふるまうのである。すると、本当に幸福な気持ちに
なるから不思議だ。
● ハーバード大学の教授であったウィリアム・ジェイムズの説を紹介しよう。
「動作は感情に従って起こるように見えるが、実際は、動作と感情は
並行するものなのである。
動作のほうは意思によって直接に統制することができるが、感情はそうは
できない。ところが、感情は、動作を調整することによって、間接に
調整することができる。したがって、快活さを失った場合、それを取り
戻す最善の方法は、いかにも快活そうにふるまい、快活そうにしゃべる
ことだ—–」
● 世の中の人は皆、幸福を求めているが、その幸福を必ず見つける方法が
一つある。それは、自分の気の持ち方を工夫することだ。
幸福は外的な条件によって得られるものではなく、自分の気の持ち方
一つで、どうにでもなる。幸不幸は、財産、地位、職業などで決まる
ものではない。何を幸福と考え、また不幸と考えるか—–その考え方が、
幸不幸の分かれ目なのである。たとえば、同じ場所で同じ仕事をして
いる人がいるとする。
二人は、だいたい同じ財産と地位を持っているにもかかわらず、一方は
不幸で他方は幸福だということがよくある。
なぜか? 気の持ち方が違うからだ。
● 「物事には、本来、善悪はない。ただ我々の考え方いかんで善と悪とが
分かれる」—これは、シェイクスピアの言葉である。
「およそ、人は、幸福になろうとする決心の強さに応じて幸福になれ
るものだ」—これは、リンカーンの言ったことだが、けだし名言である。
□ けだし名言
「けだし名言である」などと言う場合の「けだし」とはどんな意味で
しょうか?
説明:「物事を確信をもって推定する意を表す。 … 「けだし名言である」の
場合は、「まさしく名言である」と言い換えることができます。
「まさしく、たしかに」の意です。2005/11/04
● 次に引用するエルバート・ハバードの言葉を、よく読んでいただきたい。
いや、読むだけでは何にもならない—-実行していただきたい。
家から出る時は、いつでもあごを引いて頭をまっすぐに立て、できる
限り大きく呼吸をすること。日光を吸い込むのだ。
友人には笑顔を持って接し、握手には心を込める。
誤解される心配などはせず、敵のことに心をわずらわさない。
やりたいことをしっかりと心の中で決める。そして、まっしぐらに目標に
向かって突進する。大きな素晴らしいことをやり遂げたいと考え、それを
絶えず念頭に置く。すると、月日のたつに従って、いつの間にか、念願を
達成するのに必要な機会が自分の手の中に握られていることに気がつく
だろう。あたかも珊瑚虫が潮流から養分を摂取するようなものである。
また、有能で真面目で、他人の役に立つ人物になることを心がけ、それを
常に忘れないでいる。すると、日のたつに従って、そのような人物に
なっていく。—-心の働きは絶妙なものである。
正しい精神状態、すなわち勇気、素直、明朗さを持ち続けること。
正しい精神状態は優れた創造力を備えている。すべての物事は願望から
生まれ、心からの願いはすべてかなえられる。
人間は、心がけたとおりになるものである。あごを引いて頭をまっすぐに
立てよう。神となるための前段階—-それが人間なのだ。
● 昔の中国人は賢明だった。処世の道にきわめて長じていた。
そのことわざに、こういう味わい深いものがある——
「笑顔を見せたい人間は、商人にはなれない」
● 笑顔は好意のメッセンジャーだ。受け取る人々の生活を明るくする。
しかめっ面、ふくれっ面、それに、わざと顔をそむけるような人々の
中で、あなたの笑顔は雲の間から現れた太陽のように見えるものだ。
特にそれが、上司や、顧客や、先生、あるいは両親や子供たちからの
圧迫感に苦しんでいるような人であれば、「世間にはまだ楽しいことが
あるんだな」と希望をよみがえられる。
【人に好かれる原則②】
笑顔で接する。
この続きは、次回に。