「D・カーネギー 人を動かす」⑫
6. しゃべらせる
● 相手を説得しようとして、自分ばかりしゃべる人がいる。
相手に十分しゃべらせるのだ。相手のことは相手が一番よく知っている。
だから、その当人にしゃべらせることだ。
相手の言うことに異議をはさみたくなっても、我慢しなくてはいけない。
相手が言いたいことをまだ持っている限り、こちらが何を言っても無駄だ。
大きな気持ちで辛抱強く、しかも、誠意を持って聞いてやる。
そして、心おきなくしゃべらせてやるのだ。
● フランスの哲学者ラ・ロシュフコーの言葉に、こういうのがある—-
「敵をつくりたければ、友に勝つがいい。見方をつくりたければ、友に
勝たせるがいい」
その理由—-人間は誰でも、友より優れている場合には重要感を持ち、
その逆の場合には、劣等感を持って羨望や嫉妬を起こすからである。
【人を説得する原則⑥】
相手にしゃべらせる。
7. 思いつかせる
● 人から押しつけられた意見よりも、自分で思いついた意見のほうが、
我々は、はるかに大切にするものである。すると、人に自分の意見を
押しつけようとするのは、そもそも間違いだと言える。暗示を与えて、
結論は相手に出させるほうが、よほど利口だ。
● 「セールスマンたちは、一種の道義的契約を私と結んだのだ。私がその
契約に従って行動する限り、彼らもまた、そのとおりに行動しようと
決心したのだ。彼らの希望や意見を聞いてやったことが、起死回生
の妙薬となったのだ」
人に押しつけられているのだとか、命令されているのだとかいう感じは、
誰にしろ嫌なものだ。それよりも、自主的に行動しているのだという
感じのほうが、はるかに好ましい。
自分の希望や欲望や意見を人に聞いてもらうのはうれしいものだ。
● 「何年間も売り込みに失敗していたのも無理もない話だと、ようやく
わかった。それまで私は、こちらの意見を押し売りしようとしていた
のだ。
今は逆に相手に意見を述べさせている。
相手は自分がデザインを創作しているつもりになっている。
事実、そのとおりなのである。
だからこちらが売りつける必要はない。相手が買うのだ」
● 要するに、ルーズヴェルトのやり方は、相手に相談を持ちかけ、でき
るだけその意見を取り入れて、それが自分の発案だと相手に思わせて
協力させるのだ。相手の発案だと思わせて、こちらに協力させるやり
方は、ビジネスや政治の世界だけでなく、家庭内でも効果がある。
● 二千五百年前に、中国の賢人老子が、現代にも通用する言葉を残している。
「川や海が数知れぬ渓流の注ぐところとなるのは、身を低きに置くからで
ある。そのゆえに、川や海はもろもろの渓流に君臨することができる。
同様に、賢者は、人の上に立たんと欲すれば人の下に身を置き、人の
前に立たんと欲すれば、人の後ろに身を置く。
かくして、賢者は人の上に立てども、人はその重みを感じることなく、
人の前に立てども、人の心は傷つくことがない」
【人を説得する原則⑦】
相手に思いつかせる。
この続きは、次回に。