「D・カーネギー 人を動かす」⑬
8. 人の身になる
● 相手は間違っているかもしれないが、相手自身は、自分が間違っているとは
決して思っていないのである。だから、相手を非難してもはじまらない。
非難は、どんな馬鹿者でもできる。理解することに努めねばならない。
賢明な人間は、相手を理解しようと努める。相手の考え、行動には、
それぞれ、相当の理由があるはずだ。その理由を探し出さねばならない—-
そうすれば、相手の行動、相手の性格に対する鍵まで握ることができる。
本当に相手の身になってみることだ。
「もし自分が相手だったら、果たしてどう感じ、どう反応するだろうか」と
自問自答してみるのだ。これをやると、腹を立てて時間を浪費するのが、
馬鹿馬鹿しくなる。原因に興味を持てば、結果にも同情を寄せられる
ようになるのだ。おまけに、人の扱い方何一段とうまくなる。
● ケネス・グードは、その著書でこう言っている—-
「自ら顧みて、自分に対する強烈な関心と、自分以外の者に対するいい
加減な関心とを比較し、次に、その点については、人間は皆同じである
ことを考えれば、あらゆる職業に必要な原則を把握することができる。
すなわち、人を扱う秘訣は、相手の立場に同情し、それをよく理解する
ことだ」
● J・S・ニーレンバーグ博士はその著書『人とつきあう法』の中で、
次のように述べている。
「自分の意見を述べるだけでなく、相手の意見をも尊重するところから、
話し合いの道が開ける。まず、話し合いの目的、方向をはっきりさせて、
相手の身になって話を進め、相手の意見を受け入れていけば、こちらの
意見も、相手は受け入れる」
● 他人に物を頼もうとする時には、まず目を閉じて、相手の立場から物事を
よく考えてみようではないか。
「どうすれば、相手はそれをやりたくなるだろうか」と考えてみるのだ。
この方法は面倒には違いない。だが、これによって味方が増え、よりよい
結果がたやすく得られる。
● ハーバード大学のドナム教授はこう言っている—
「私は人と面接する場合には、あらかじめ、こちらの言うべきことを
十分に考え、それに対して相手が何と答えるか、はっきりと見当がつく
までは、相手の家の前を二時間でも三時間でも行ったり来たりして、
中へ入らない」
本書を読んで、相手の立場になって物事を見きわめるということさえ
会得すれば、本書はあなたの生涯にとって画期的な役割を果たすことに
なるだろう。
【人を説得する原則⑧】
人の身になる。
9. 同情を寄せる
● 口論や悪感情を消滅させ、相手に善意を持たせて、あなたの言うことを、
大人しく聞かせる魔法の文句を披露しよう—–
「あなたがそう思うのは、もっともです。もし私があなただったら、
やはり、そう思うでしょう」。こう言って話をはじめるのだ。
どんな意地悪な人間でも、こういうふうに答えられると、大人しくなる
ものだ。しかも相手の立場になれば、当然相手と同じ考えを持つわけ
だから、この文句には百パーセントの誠意がこもるはずだ。
● 我々がヘビでない唯一の理由は、我々の両親がヘビでなかったからだ。
我々の人となりには、自分が手を下してつくった部分は、ほんのわずか
しかない。したがって、我々の接する相手が、どんなにいら立っていたり、
偏屈だったり、わからずやだったとしても、その責めをすべて本人に
帰するわけにはいかない。気の毒だと思ってやるべきだ。
同情してやることだ。そしてこう考えるのだ。
「もし神様のお恵がなかったら、この相手が、私自身の姿なのだ」
● アーサー・ゲイツ博士の有名な著書『教育心理学』に、こういうことが
書いてある—-
「人間は一般に、同情をほしがる。子供は傷口を見せたがる。時には
同情を求めたいばかりに、自分から傷をつけることさえある。大人も
同様だ—–傷口を見せ、災難や病気の話をする。ことに手術を受けた
時の話などは、事細かに話したがる。不幸な自分に対して自己憐憫
(自分がかわいそうと思うこと)を感じたい気持ちは、程度の差こそあれ、
誰にでもあるのだ」
【人を説得する原則⑨】
相手の考えや希望に対して
同情を寄せる。
この続きは、次回に。