リテールマーケティング ㉑
5. POSレジによる販売データの活用
1. 代表的なPOSデータの分析手法
日々大量に蓄積されるPOSデータからは、次のような分析効果が得られる。
・売れ筋商品/死に筋商品
・在庫が不足がちな商品/過剰在庫になりがちな商品
・セット(組み合わせて)でよく売れる商品 など
これらの分析からさまざまな施策が打てるようになる。
ここでは、代表的な3つの分析方法について概略を説明する。
(1) ABC分析
店舗には数多くの商品が陳列されているが、そのなかにはよく売れるものと、
ほとんど売れないものがある。
ABC分析とは、商品を販売数量の多い順にA、B、Cの3つのカテゴリーに
分け、売れ筋商品やカットすべき商品(死に筋商品)をわかりやすくする
分析方法である。
例えば、ある期間内の累積売上数量の上位80%までをAランク、80〜
95%までをBランク、95〜100%までをCランクに分類する。
こうすることで、どの商品が全商品のなかでどのくらいの割合で売れて
いるのか実態が一目でわかり、力を入れて販促していくべき商品とそう
でない商品を区別することができるようになる。
たとえば、
・よく売れている商品なら、発注量を増やす。
・あまり売れていない商品なら、発注量を減らすか、販売を見合わせる。
・どちらともいえない商品なら、発注量はそのまま様子を見る。
などのように、発注量や在庫量の調整のヒントが得られる。
(2) トレンド分析
トレンド分析とは、ある商品の売上推移を日別、週別、月別といった
時系列に沿ってみていく分析方法である。
月別のように長期で商品の売上推移をみた場合、季節による変動が把握
しやすく、いつ、どの商品の販促に力を入れるべきかが明確になってくる。
たとえば、
・商品a—春先から夏場にかけて販売数が増加し、8月にピークを迎える。
・商品B—5月の大型連休と8月のお盆、年末年始休暇時に販売量が集中する。
など、商品ごとに売れるタイミングが異なる場合、それぞれの時期を把握
することで発注量の調整が可能になる。
また、週別や日別のように短期でのトレンドでは、天候や曜日別での商品の
売れ筋が把握しやすくなり、在庫量などその時の状況に応じた臨機応変な
対応をどうすべきか、といったことを決めていくときに使われる。
(3) バスケット分析
バスケット分析は、顧客がレジに持っていく買物カゴ(バスケット)の中身を
分析する手法である。買物カゴ1つを単位として、どの商品とどの商品が
一緒に購入されたかを調べて傾向を把握し、頻繁に購入される商品の組み
合わせを見つけるための手法である。
買物をする顧客に共通の傾向を見出すことができれば、たとえば、
・「商品Aと商品Bが一緒に買われやすい」なら、セットで販売する。
・「商品Cと次に商品Dが買われやすい」なら、それぞれの陳列場所を近づける。
など、さらに販促を強化したり、店内の商品配置を変えて同時購買率を
高めたりしてマーケティング施策に生かすことができる。
なお、POSデータだけの分析では限界がある。
なぜなら、POSデータは、「何が、いつ、いくつ、いくらで売れた」と
いう過去の情報である。そのため、その他のデータも組み合わせてさま
ざまな観点から分析することが大切である。
この続きは、次回に。