リテールマーケティング ㉚
③ ダイレクトメール(DM)広告の戦略的活用法
今日まで、あらゆる小売業がダイレクトメール(DM)広告を活用し、顧客や
ターゲットに商品・サービスの案内やカタログなどを送付し、メッセージを
伝えてきた。それが最近では、「DMをやっても効果がなくなった」と
嘆く小売店が増えている。
だがそれは、DM効果が効かなくなったというよりは、DM広告の目的や
実施方法を小売業が正しく理解していないことに原因があるといえる。
チラシ広告となんら変わらない方法でDM広告を行うなど、DM広告の
特性を理解していないからである。
1. DM広告が改めて注目されている
DM広告は、顧客の自宅ポストに直接届ける広告手法である。
ITが隆盛している今日では、他のマーケティング手法に目が行きがちで
あるが、DM広告には、紙ならではのメリットがあり、顧客の心を動かす
効果に改めて注目が集まっている。また、DM広告は一見手間がかかる
手法に見えるが、きちんと手順を踏んで実施すれば、コスト以上の効果が
得られる手段になる。AIDMAの法則からも説明できるように、DM広告は
手元に残るための記憶(M)に残りやすく、記憶から購買行動へは比較的
移行しやすいためである。
事実、DM広告を受け取った結果、「インターネットで調べた」「話題に
した」「来店した」など、何らかの行動をとった人は22.4%にも上ると
いうデータもある(「DMメディア実態調査2017」より)。
■ 【隆盛】りゅうせい
■ AIDMAの法則
AIDMAの法則は、消費者の購買行動の流れを示したものです。
AIDMAの法則によると、消費者が物を購入するときには「注意→興味→
欲求→記憶→購入」の流れを無意識に行っているとされています。
これらの状態の頭文字を1つずつとって「AIDMA」と名付けられてい
るのです。2020/02/25
AIDMA(アイドマ)の法則とは、消費者が商品を知ってから購買するまでの
プロセスを示したフレームワークです。
AIDMAは、「Attention(認知する)」「Interest(興味をもつ)」
「Desire(欲しいと感じる)」「Memory(記憶する)」「Action
(購入する)」というそれぞれプロセスの頭文字をとったもの。
商品の認知から始まる5段階のプロセスを経て、消費者は商品を購入するに
至ります。
【AIDMAにおける消費行動プロセス5段階】
1. Attention(認知する):商品の存在を広告などで知る
2. Interest(興味をもつ):「自分の悩みを解決してくれそうだ」と
期待し、商品に興味をもつ
3. Desire(欲しいと感じる):商品の特徴を認識し、欲しいと思う
4. Memory(記憶する):商品を記憶し、購入を検討しはじめる
5. Action(購入する):商品を購入する
2. 何のためにDM広告を活用するのか
DM広告を効果的に行うには、その企画自体の目的を小売店が十分に理解
しなければならない。つまり、対象顧客の選定と送付の目的を合致させる
ことが、DM広告を実施するうえでの基本である。
そして、旬や生活シーンの具体的提案とその品ぞろえ、さらに対象となる
顧客にとっての魅力ある特典を明示する。これらを同時に満たすことが、
DM広告のヒット(回収)率を向上させるポイントである。
(1) ターゲットの選定基準
DM広告を実施している小売店の大半は、一定期間での買上金額で上位
何名という選定方法を採用している。
この方法では、自店へのロイヤルティの高い顧客という共通点がある半面、
年齢、職業、家族構成などがバラバラで、標的顧客を捉えることができ
なくなる。つまり、新規顧客を無差別に開拓するチラシ広告と何ら代わり
映えしないということである。重要なのは、買上金額基準から購買目的別
基準へとターゲットの選定方法を変えることである。
(2) 送付目的の明確化
主に、最寄品を中心に扱う小売店では、一般的に、働く女性を対象とする
ことがビジネス面で効果的といえる。
たとえば、薬局・薬店やドラッグストアがDM広告を実施する場合、腰痛、
冷え性、慢性肩こり、眼精疲労などの販促テーマが考えられる。
そこで、「今が治す絶好の機会」と決断させるDMの活用法の基本である。
(3) 商品カテゴリーの選定
商品カテゴリーとは、品目の選定ではなく、品種の組合せから検討する
ことを意味する。これを品種ミックスという。
前述の事例でいえば、腰痛や眼精疲労で悩む働く女性を対象とする場合の
品種構成は、ビタミン、ミネラル、目薬、貼り薬などをトータルコーディ
ネートして使い方や効能を提案するということである。
(4) 送付方法の工夫
たとえば、封筒なら、表紙に「慢性肩こり撃退リポート在中」などと
目立つ色で明記し、中を開けたくなるように工夫をする。
この続きは、次回に。