リテールマーケティング ㉟
第4部 押さえておきたい販売・経営管理知識編
① 知っておきたい食品表示に関する法知識
今日、食の「安全・安心」に対する消費者の関心は高く、食品を購入する
際に、食品の原材料や原産地、含まれている栄養成分や添加物などの表示を
参考にする消費者は多い。
食品表示は、消費者が摂取する食品を選ぶ際の重要な判断材料になる。
昨今の食の安全を脅かす不祥事が相次いだ背景からすれば、わかりやすい
食品表示に取り組むことは、食品関連の事業者にとって社会的な信用に
かかわる重要な義務であり、食品表示法を正しく理解することが必要不可欠と
なっている。
1. 食品表示法の概要
食品表示法は、食品を摂取する際の安全性および一般消費者の自主的、
かつ、合理的な食品選択の機会を確保を確保するため、「JAS法」「食品
衛生法」「健康増進法」の食品表示に関する規定を統合して、食品の表示に
関する包括的、かつ、一元的な制度として創設され、2015(平成27)年4月
1日に施行されている。
同法では、次の食品に関する表示の基準を定めている。
① 名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の
量および熱量、原産地その他食品関連事業者(食品の製造者、加工者、
輸入者または販売者)が食品の販売をする際に表示されるべき事項
② 表示の方法その他①に掲げる事項を表示する際に、食品関連事業者等が
遵守すべき事項
なお、加工食品および添加物の表示の経過措置期間(食品表示基準の施行後、
新ルールにもとづく表示への移行のために猶予期間)については、2020
(令和2)年3月31日までとなっており、生鮮食品の表示の経過措置期間に
ついては、2016(平成28)年9月30日で終了している。
食品表示法の表示違反があった場合には、罰則が規定されている。
2. 期限表示
全ての加工食品には、食品の期限表示として「賞味期限」または「消費
期限」が記載されている。
① 賞味期限
日持ちが長い加工食品に表示される期限で、おいしく食べることができる
期限のこと。この期限を過ぎてもすぐに食べられないということではない。
賞味期限が3か月を超えるものは「年月」で表示し、3か月以内のものは
「年月日」で表示する。
② 消費期限
日持ちが短い加工食品に表示される期限で、この期限を過ぎたら食べない
ほうがよい期限のこと。「年月日」で表示する。
なお、いずれも開封前の期限を表しており、開封後の日持ちについては
消費者が自ら判断する必要がある。また、品質の劣化が特に早い弁当箱は、
期限表示に「時間」まで記載することが望まれる。
品質の劣化が極めて少ないもの(砂糖、食塩、アイスクリームなど)は、
期限表示を省略することができる。
3. 生鮮食品の産地表示
全ての生鮮食品には、産地(原産地)を表示することが義務付けられている。
表1-1 生鮮食品の産地表示
—省略—-
4. 原料原産地表示
2017(平成29)年9月に食品表示法が改正・施行され、国内で作られて
すべての加工食品に対して、原料原産地表示を行うことが義務付けら
れた。原料原産地が国内の場合には「国産である旨」を、輸入品に
あっては「原産国名」を表示する。(本制度の経過措置期間は2022年
3月31日までとなっている。)
5. 栄養成分表示
容器包装された加工食品には、「熱量(カロリー)、たんぱく質、脂質、
炭水化物、ナトリウム」の5成分を表示する義務がある。
なお、ナトリウム量は、消費者にとってわかりやすい「食塩相当量」で
表示する。また、酒類や店内加工食品、小規模事業者が販売する者など
には表示の省略が認められている。
6. アレルギー表示
アレルギー表示は、発症事例が多いもの、症状が特に重篤なものについて、
現在7品目が表示義務(特定原材料)、21品目が表示推奨(特定原材料に準ずる
もの)とされている。
表1-2 アレルギー表示
[表示義務(特定原材料)]
卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生
[表示推奨(特定原材料に準ずるもの)]
あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、
牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、
まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、アーモンド
7. 機能性表示食品
一般の食品と異なり、機能性を表示することができる食品は、これまで
「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」に限られていたが、新しい
食品表示制度では、これらに加えて「機能性表示食品」制度が創設されて
いる。
機能性表示食品は、消費者庁長官に届け出た安全性や機能性に関する一定の
科学的根拠にもとづいて、事業者の責任において表示した食品である。
(トクホのように、消費者庁の審査・許可を受けた食品ではない。)
また、機能性表示食品は、加工食品やサプリメントだけでなく、野菜や
果物などの生鮮食品も対象となっている。
この続きは、次回に。