書籍「すごい物流戦略」DHL③
● 「4つの事業」の売上げはいずれも2兆円前後
次に、現在のDHLの4つの事業について見ていきます。
4つの事業とは、本章の冒頭でも記していますが、ECの物流サービスで
あるPost-eCommerce-Parcel(以下PeP)、Express’Global Forwarding
Freight(以下Forwarding)、Supply Chain(以下3PL)で、いずれの事業に
おいても、かなりの市場シェアを有しています。
まずPePは、ドイツ国内の郵便で61%、宅配で45%のシェアを持っています。
宅配シェア45%というのはヤマト運輸の日本国内シェアとほぼ同じレベルです。
220以上の国・地域で展開しているExpressは世界シェア34%。
ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジアではナンバーワン、FedExがダントツの
シェアを誇る米国でもナンバースリーの座にあります。
150以上の国・地域でサービス提供するForwardingは航空貨物がナンバーワン、
海運はナンバーツー。
50以上の国・地域で請け負う3PLの世界でもナンバーワンです。
2017年のデータでは、DHLのシェアは7.6%。第2位が2.4%(米国XPO
Logistics)ですから、その差は大きいと言えるでしょう。
余談ですが、同じ日本人としてちょっとうれしいのが、3PLの世界シェア
第4位に日立物流がランクされていることです。
日本国内ではこれまで以上の事業拡大が厳しくなってきていますから、
グローバルでの展開を積極的に進めているのでしょう。
2017年決算での、4事業それぞれの売上高は、PePが約181億ユーロ
(構成比29.4%、約2兆3500億円)、Expressが約150億ユーロ(同23.4%、
約1兆9500億円)、Forwardingが約150億ユーロ(同23.4%、約1兆8700億円)、
3PLが約141億ユーロ(同22.9%、約1兆8300億円)と、バランスよくそれ
ぞれの事業が日本円で2兆円前後を稼いでいます。
ただ2010年から推移を見てみると、PePが2010年から2017年の間に
約50億ユーロ、Expressが約40億ユーロ増やしているのに対し、Forwarding’3PLは
横ばいか、やや増にとどまっているという違いが表れています。
次に利益について見て見ましょう。
PePが約15億ユーロ、Expressが約17億ユーロであるのに対し、
Forwardingは約3億ユーロ、3PLは約5億ユーロという開きがあります。
売上げでほぼ3割を占めるPePが3分の1以上の利益を稼いでいますが、
その上を行くのがExpressで、売上構成比は4分の1程度ですが利益で見た
ときには4割以上を稼ぎ出しています。
このExpressの収益性の高さについては、同社では航空機を250機所有して
おり他社に貸し出しを行なっているため、収益をあげやすい構造になって
いると考えられます。
● 郵便窓口の総数をピーク時の半分以下に削減
Postの売上げは前年からわずかに数字を落としていますが、シェアでは
逆に61.3%から61.7%にアップしており、競争力が低下したわけでは
ありません。
1991年に約2万5000店舗あった直営の郵便局の業務をコンビニなど他の
事業者への業務委託に切り替えながら(日本でも切手販売等郵便業務の
一部についてはコンビニなどに委託するケースも増えています)、郵便
窓口の総数を年々減少させ、2013年には窓口をピークから半分以下にし、
100%近い委託比率にもっていくなど、運営コストの引き下げを図って
います。また国内82ヵ所にほぼ自動での仕分けが可能な配送基地(Mail
Sorting Center)が稼働中で、作業の効率化も進めています。
そうした積極的な取り組みもあって、売上げは少しずつ落としながらも、
利益率10%レベルを安定的に持続しています。
Post事業の売上げ構成は、いわゆる郵便(Mail Communication)が3分の
2(66%)、カタログ(Dialog Marketing)が約4分の1(24%)、残り(10%)を
その他が占めています。ここで興味深い変化として、デジタルとリアルを
つなぐカタログの構成比が少しずつですが伸びているそうで、このこと
からも、世の中のオムニチャネルへの対応が着実に進んでいることがわかり
ました。
この続きは、次回に。