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書籍「すごい物流戦略」DHL⑦

● 成長著しい東南アジア市場での展開エリアを拡大

 

これまではドイツ国内のPeP事業を中心に見てきましたが、ここからは

少し視点を広げて海外でのPeP事業についても見ていきます。

 

最初はヨーロッパでのPeP事業についてです。

展開エリア別に売上げ規模を見ていくと、2017年決算ベースで、ドイツが

50億2200万ユーロ(前年比4.3%増)、ドイツを除くヨーロッパが18億

8200万ユーロ(同65.4%増)、ヨーロッパおよびロシア以外が15億2800万

ユーロ(同10.3%)となっています。

このように、特にヨーロッパの売上げの伸びが急激です。

これは2016年にイギリスの会社をM&Aしたことが大きな要因ですが、

2016年から2017年にかけて一気に展開エリアを拡大したことも大きいと

思います。

DHLとして直接参入できないエリアでも、現地企業とのパートナーシップ

契約という手法を通じてどんどん入り込んでいきました。

その広がりを具体的に見ていくと、2016年段階では、スウェーデン、

オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、

オーストリアが、ドイツ以外での展開エリアでしたが、2017年になると、

イギリス、スペイン、ポルトガルが加わり、パートナー契約により、

ノルウェー、フィンランド、デンマーク、エストニア、ラトビア、リト

アニア、ハンガリー、クロアチアの宅配も可能になりました。

 

一方、ヨーロッパ以外の地域でのPeP事業の展開に関しては、あまり

積極的ではありませんでした。しかし、「Strategy 2020」に掲げる目標

達成のため、2018年より他地域でのPeP事業を本格化させています。

 

まずアメリカです。

国土の広い米国ではベース基地の役割を果たすハブ空港をどこに設ける

かで、効率的な配送ができるかどうかが決まってきます。

基本的には人口重心(人口分布から見た中心)に拠点を設置することになる

のですが、西海岸の人口増に伴い、人口重心も年々、少しずつ西側へ移動

しています。

現在、DHLのハブ空港はシンシナティ近くのノーザンケンタッキー国際

空港にあり、所有する62機をフルに活用してExpress事業(国際宅配)を

展開しています。実は、アマゾンのPrimeAirサービス(国際航空便を利用

したスピード配送)も同空港をハブ空港として利用しており、DHLは空港

施設の一部をアマゾンに貸し出しています。

ちなみに他の主要宅配事業者では、FedExがメンフィス、UPSがルイビルに

ハブ空港を置いていて、3社とも、中西部にハブ空港を置いています。

 

PePとしては、USPSのインフラを活用するネットワークを組んで販売

するだけでなく、短期間で配達するインスタントデリバリーをロサンゼ

ルスで開始しました。UPS、FedExともに本格参入していない配送サー

ビスに参入したのです。

 

次にPeP SEA(東南アジア)です。

先述したように、「Strategy 2020」では新興国からグループ売上げの

30%を確保するという目標が掲げられています。成長著しい東南アジアで

DHLは、タイを皮切りに、マレーシア、ベトナムへと展開エリアを広げて

います。

さて、DHLは、PeP事業の第二の拠点として、米国と東南アジアのどちらに

注力していくでしょうか。

その答えは明らかです。せいぜい2%程度の経済成長しか見込めない米国と、

例えばタイのように成長が少し鈍ったとして10%の経済成長が期待できる

エリアとで、どちらが大きな成長をもたらしてくれるか、そう考えれば

選択肢は東南アジアしかありません。

しかも、中期計画で「新興国で売上げ3割」という明確な目標数値を掲げて

いるぐらいですから、がんがん積極的に入っていくことでしょう。

DHLにはアントレプレナーとしてのDNAが深く刻み込まれています。

 

私が経営するイー・ロジットでは、タイにジョイントベンチャーで創業

したSHIPPOP’投資をしたSiam Outletがありますが、DHLからの営業が

来ているという話をよく聞き、彼らの積極的な展開の力強さを感じています。

 

 

この続きは、次回に。

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