実践するドラッカー[思考編] ㉙
A lesson from P.F.Drucker
∵ 強みを生かす三つのステップ
第一は、(中略)明らかになった強みに集中することである。(中略)
第二は、その強みをさらに伸ばすことである。(中略)
第三は、(中略)無知の元凶ともいうべき知的な放漫を正すことである。
『明日を支配するもの』—-p.196
ドラッカー教授は、「知的放漫」という言葉をたびたび使います。
「もうこれで十分」という気持ちをもつことを強く戒めるものです。
この言葉の原点が、「人生を変えた七つの経験」(『プロフェッショナルの
条件』)に記されています。
一八歳のある晩、ハンブルクでオペラ『ファルスタッフ』を聞いて生涯
忘れることのない衝撃を受け、その曲について調べました。
そこで作曲家ヴェルディへの問いと答えを目にします。
「八○歳でという年齢でなぜ、並はずれて難しいオペラ(『ファルスタッフ』)を
もう一度書くという大変な仕事に取り組んだのか」
この問いに対する答えが、こうでした。
「完全を求めて、いつも失敗してきた。だから、もう一度挑戦する必要が
あった」
この短い問答を目にしたドラッカー青年は、「私はこの言葉を忘れたことが
ない。それは心に消すことができない刻印となった」と述べています。
そしてそのとき、「いつまでも諦めずに、目標とビジョンを持って自分の
道を歩き続けよう、たとえ失敗し続けても完全を求めていこう」と心に
決めたそうです。
そしてドラッカー教授は、九○歳を超えても著作を書き、ベストを追求し
続けました。
若き青年を巨人へと育て上げたのは、常に「まだまだ」と現状に満足しない
姿勢でした。
A lesson from P.F.Drucker
∵ 強みは実践により開発される
強みを生かすということは行動することである。(中略)
強みを生かすことは、実行によって修得すべきことであり、実践によって
自己開発すべきものである。
『経営者の条件』—p.220
セミナーを聞いたり、本を読んだりして刺激を受けても、次の日から実践に
移す人は少数です。知ることと、わかることの間には大きな隔たりがあり、
いくら知っても、わからなければ行動にはつながりません。
知ることは、単に頭の中にしまってあるだけの状態であり、わかることは、
納得するということです。
目にしたことを素直に受け止め、それが大切だと納得して初めて、やって
みようという気が起きる。そうでなければ、体は動きません。
さらには、素直な心で繰り返し実践することで、いつしかその行動が定着し、
習慣化します。
強みもまた、行動につながらなければ、発揮できません。
さらには、実践を積み重ねる中で、磨き上げていくものです。
まずは自らの強みを知り、それを意識しながら日々の仕事に励むこと。
そして、必要に応じて強みをどう生かすかを調整しながら、より大きな
成果を目指していきます。
その意味で、仕事以外で強みを磨き上げることは難しいのです。
ぜひ、強みを生かすことを習慣とし、成果をあげる人を目指しましょう。
この続きは、次回に。