「人を動かす人」になれ! ⑤
5. 苦労には有形無形の利子がつく
● 客先の要求する性能には及ばないが、かなりレベルの高い製品が仕上
がる。それを、断られるのではないかと恐る恐る持っていくと、「大した
もんだ。まさか、ここまでやってもらえるとは—-」と買い上げてくれた。
実は、ここで蓄積した技術力がこの後アメリカに売り込みをかけたときに
たいそう役に立った。このときに、「とても無理だ」「不可能だ」と
あきらめていたら、日本電産はとっくに倒産していたと思う。
わたしは苦労こそ財産だと考えているが、この理由は苦労には後で有形
無形の大きな利子がついてくると実感しているからだ。
完成した製品そのもの、そして技術力がカタチある利子の代表である。
しかし、それよりも情熱、熱意、執念さえ持続することができれば、
不可能も可能にすることができるという自信と信念、こうした無形の
利子を得たことの方がはるかに大きな価値があった。
● 有形無形
形あるものと、形がないもの。 目に見えるものと見えないものの両方。
「有形無形の(援助、恩恵)」などという表現で用いられる。
6. 「仕事ほど楽しいことはない」といえるか
● 五○歳を過ぎてつくづく思うのは、健康の大切さとありがたさである。
日ごろから健康には十二分に注意をしているおかげで、この九年余り
の間、風邪一つひいたことがない。ちなみに、わたしの健康法は、
週に四万五○○○歩歩くこと、食事の好き嫌いは一切しないこと、大きな
声で話すこと、そして、仕事で徹夜をすることはあっても、夜遊びは
せずに規則正しい生活を送ることである。
● わたしには、ゴルフよりも仕事の方がはるかにおもしろくて、しかも
楽しい。世の中には「ゴルフほど楽しいことはない」と人に勧めて
まわる人はたくさんいる。しかし、残念ながら、「仕事ほど楽しい
ことはない」と勧めてまわる人はほとんどいない。
仕事もゴルフの練習と同じで、苦しんで苦しんで苦しみ抜いた後で、
一条の光が差し込んできたときにはじめて、おもしろさがわかりかけ、
その光が大きく輝いたときに仕事の本当の楽しさや喜びを実感できる
のだと思う。
人を動かそうと思えば、まず自分自身がこの楽しさや喜びを味わって
おく必要がある。そのためには、仕事の苦しさや苦痛から逃げ出さな
いこと。この苦しみと楽しみの落差
● 十二分
十分すぎるほどたっぷりしていること。また、そのさま。
「―に利益を上げる」
● 十分/充分
1. 満ち足りて不足のないさま。充実して完全であるさま。
「―な休養」「―に整う」
2. 思い残すところのないさま。思うまま。「―楽しむ」「―注意する」
3. 必要なだけ、またはそれ以上あるさま。
「まだ―使える」「隣町まで5キロは―ある」
● 一条の光
暗黒の中に差し込む筋状の光。 無明・暗愚・絶望などの状況における
希望の比喩としても用いられる。
● 暗愚
物事の是非を判断する力がなく、愚かなこと。また、そのさま。
「―な為政者」
● 是非
1. 是と非。正しいことと正しくないこと。また、正しいかどうかということ。
「―を論じる」「―を問う」
2. 物事のよしあしを議論し判断すること。批評すること。
● 比喩
ある物事を、類似または関係する他の物事を借りて表現すること。
たとえ。→比喩法
この続きは、次回に。