「人を動かす人」になれ! ⑨
12.人間性が一流の人と、三流の人の、この人づかいの差
「一流の能力を持っていても、人間として三流の管理者であれば、
五流以下の業績しかあげられない」。これがわたしの持論である。
では何をもって人間性を三流とするのか。
それは次のポイントがある。
まず、部下は自分の指示や命令で動くものだと勘違いしている点だ。
たしかに、表面上、部下は上司の指示や命令で動く。
だが、これは会社の規則やルールのなかに、上司の指示に従うことが
明記してあり、この規則やルールに反すると罰を受けるから指示通りに
動くのである。これを部下が自分のいうことをきいてやっていると思う
のは大間違いだ。
こういう勘違いをしている管理者は、部下が大きな成果をあげたり、
トップから褒められたときに、自分が上司であることを主張しようと
する。曰く「つい、この間までは何もできなかった彼を育ててやったのは
オレだ」と—-。ところが、部下が大勢の前で叱られていたり、責められて
いたりしたときには、まったく他人ごとのように振る舞う。
部下が窮地に立たされているのに、何一つ手を差し伸べてやろうとは
しない。また、大きな問題が発生したときに、オロオロするだけで何ら
手を打てず、口をついて出てくるのは自己保身のための言い訳ばかりと
いうのも人間性三流の管理者の特徴である。
この典型的な例がクレーム処理である。
客先からクレームが入ったとすると、「営業の担当者は誰だ」「どこの
工場でつくった」「工場の責任者は」というように、報告を求めるだけで
自らは動こうともしない。頭のなかは、責任回避のことでいっぱいに
なっている。
こんなときに、すぐに飛んでいって土下座をして誤ってくる。
あるいは、徹夜作業の先頭に立って製品をつくり直すぐらいのことが
できなければ、とても一流の人間とはいえない。
「いい右腕が欲しい。信頼できる部下に育って欲しい」—–管理者は
誰もがこのように考えている。しかし、部下というのはその上司を映す
カガミのようなものである。「欲しい」ではなく自分自身の器を大きく
して、力を引き出してやらなければ一流の部下は育たない。
一流の部下を育てるには、部下の心を読み、心で部下を動かしていかねば
ならない。
壁にボールを投げたときに、勢いがよければボールも勢いよく跳ね返って
くる。弱ければ力のないボールしか返ってこない。
上司と部下との心と心のキャッチボールも理屈は同じだ。
まず、自らを磨いて鍛え直し、大きな愛情を持って指導を行う。
これに意気を感じた部下が期待に応えてくれるのである。
自分が投げた力以上のボールが返ってくることはない。
● 一流
一流とは何かと問われた時の模範解答は「その分野での第一等の地位、
第一級」となります。
一流を定義すると「一流の複数名が一流と認めた人、物」となります。
それは「一流とは一流の複数名が認めた人、もの」であるという事実
です。
どこかの三流が何百万人集まって、「ピエール・クロソウスキー氏の
「生きた貨幣」は三流の本だ」と評価したところで何の意味もありません。
フーコー氏が「この本は超一流だ」と言ったらそれが一流なのです。
一流の人の2〜3人が「あの人、あの本、あの物は一流」と言ったら、
それは一流だということです。
三流の人が100万人集まって、「あの人、あの本、あの物は一流」と
言ったら、それは三流だということです。
この仮説を「高学歴→超大企業入社→独立 中小企業オーナー社長」に
お話したところ、「その通りだ」と絶賛されました。
● なぜ松下幸之助は「一流の人材ばかりの会社はダメ」と言ったのか
松下さんの言葉を一言。
「一流の人材ばかり集めると会社はおかしくなる。世の中、賢い人が
揃っておれば万事上手くいくというものではありません。賢い人は、
一人か二人いればたくさんです」
● 窮地
追い詰められて逃げ場のない苦しい状態や立ち場。
「―に陥る」「―を脱する」
● 責任回避
責任をとらずに逃げる、逃れること。
● 土下座
1. 昔、貴人の通行の際に、ひざまずいて額を低く地面にすりつけて礼を
したこと。
2. 申し訳ないという気持ちを表すために、地面や床にひざまずいて謝る
こと。「―して許しを請う」
この続きは、次回に。