「人を動かす人」になれ! ⑭
17.どう身につける? 「人を動かすのがうまい人」の得意ワザ
リーダーの仕事をとことん集約していくと、いかにして人を動かすかと
いうところにつながっていく。計画を立てるのも、企画を立案するのも、
戦略を構築していくのも、これらのすべて人を動かすためである。
社員や部下、顧客やユーザーに何を提供していけば、納得して動いて
もらえるのか。計画、企画、戦略というのは、いわばこのプレゼンテー
ションのためのツールの一つにすぎない。
よくいわれることだが、人間一人の力なんてたかが知れたものだ。
リーダー一人がいくら頑張ってみたところで、大したことはできないの
である。したがって、いかに多くの人を機敏に動かしていくか。
このためのツールをたくさん装備していることが、強いリーダーの条件と
なる。
たとえば、社員や部下であれば目標を与えればよいのか、それとも方針
なのか。あるいは責任なのか名誉なのか、やりがいを求めているのか、
メリットなのか、また、叱れば動くのか、褒めた方が効果があるのか—。
あるいは相手がそれぞれに望んでいるものを早く見極めて、これを的確に
与えていく。これは、顧客やユーザーについても考え方は同じだ。
最初は相手のニーズ、要望をつかんで的確かつスピーディに応えていく。
すべてはここからスタートするのである。
人を動かすことに情熱を持ちながらも、人を動かすのが下手なリーダーと
いうのは、こうした絞り込み、すなわち相手が何を求めているのかを
しっかりとつかまずに、あれもこれもと総花的に与えようとする。
だから、「過ぎたるは及ばざるがごとし」のことわざ通り、相手はかえって
負担を感じて煩わくなり、心が離れてしまうのだ。
反対に人を動かすがうまいリーダーというのは、自分の得意ワザへと巧みに
持ち込んでいく。
一例をあげると、人を感動させるのが得意であるなら、いろんなプロセスを
経て最後はこれで勝負をかける。人を動かすツールを多く装備している
強いリーダーが、このテクニックに磨きをかけると、さらに多くの人を
動かせる。
では、こうした得意ワザはどうすれば身につくのかといえば、いろんな
経験、特に辛抱を体験することが一番の近道となる。
会社の仕事のなかには、それこそうんざりするような単純作業も少なく
ない。この苦痛や辛さを知っていれば、そうした仕事をしている部下との
接点も見つけやすい。つまり、一つでも多くのことを体験しておくことが、
人を動かすためのツールを増やすことにつながるのである。
● 集約
物事を整理して、一つにまとめること。
「調査結果を―する」「反論はこの一点に―される」
● 機敏
時に応じてすばやく判断し、行動すること。また、そのさま。
「―な動き」「―な処置」
● 総花的(そうばなてき)
おおむね「全員に花を持たせるようなやり方」という意味合いで用いられる
表現。特定の者を抜擢するのではなく、総員まんべんなく恩恵や注目が
たとえば、「総花的な閣僚人事」といえば、各部署に花形(人気者)を
配属するような人事を指し、「総花的な政策」といえば、結局「全方位に
「総花的」は、もっぱら否定的・批判的な意味合いで用いられる。
要するに「メリハリがない」「選択と集中ができていない」「リスクを
取ろうとしていない」という意味合いが「総花的」の語に込められている
わけである。
● 過ぎたるは及ばざるがごとし
度が過ぎたものは、足りないものと同様によくない。
不十分なのも困るが、過剰なものには弊害があり、物事にはほどよさが
大切である。
[解説] 「論語―先進」にあることばで、孔子が二人の門人、子張と子夏とを
比較して中庸の大切なことを述べたものですが、ことわざとしては、程度の
はなはだしいことをいさめる意で用いられます。
この続きは、次回に。