「人を動かす人」になれ! ㉝
37.「求められる人材」—-五つの空極的条件
幹部候補の研修会用として最近つくったレジュメの一つに、「求められる
人材とは」とタイトルをつけたものがある。
これは、わたしの経営者人生二五年間の集大成といえるもので、
1. 野心のある努力家
2. プライドのある情熱家
3. やり抜くネアカ
4. 負けず嫌いの耐心家
5. 経営感性を持つ細心家
という五つの条件を掲げている。
最初に断わっておくが、このうちの一項目にでも該当するような人材は、
恐らく数百人採用しても一人いるかいないか。
一人いれば御の字だと考えているので、ほとんど理想に近いと解釈して
もらったらいいだろう。
なぜなら、几帳面な人ほど融通が利かないのと同じで、大きな野心を
持っている人間ほど努力をしない。プライドの高い人間ほど一つのことに
情熱を燃やせない。また、物事に執念を持って取り組む人間ほどオタク的な
性格を持っている。さらに、負けず嫌いな人間ほどキレやすく、我慢する
ことができない。そして、経営感性にすぐれている人間ほど大雑把で、
デリカシーにも乏しい。
しかし、野心家が努力すれば鬼に金棒だし、素晴らしい経営感覚の持ち主が
人の心を打つような気配り、心配りができるようになれば人望は集まり、
放っておいても部下はついてくる。
わたしはこうした人材に将来の日本電産を背負ってもらいたいと考えて
いるので、入社一○年目ぐらいの、まだ荒削りではあるがキラリと光る
素質を持った社員に対して、特別に研修会を実施している。
そして、「君は一生懸命努力するタイプだから、もう少し野心を持て」
とか「君の負けず嫌いは社内でも有名になっている。
これはこれで残して、もう少しでいいから辛抱することを覚えると、
一○年もするとすばらしい経営幹部になれる」といったように、一人一人に
このレジュメを見せながら、個々にアドバイスをしていく。
ここまでやると、彼らは充分に納得し、「頑張ります」と答えてくれる。
人を動かすというのは、強権を発動して自分の命令通りに動くロボットや
イエスマンをつくることではない。
本人の成長を第一に考えて、そのことと会社の発展とを組み合わせた的確な
アドバイスを行ったとき、人は自分の意思で行動を起こすようになる。
● レジュメ
レジュメとは、要旨、要約といった意味の言葉です。
論文の内容を要約したものや、セミナーや講演会、勉強会などで配布する
ために発表の要点を簡潔にまとめたもののことを言います。
最近では、外資系企業などの影響で、履歴書・職務経歴書(特に英文で
作成されたもの)のことをレジュメと呼ぶようになり、日本でも定着して
います。
● 集大成
多くのものを集めて、一つのまとまったものにすること。
また、そのもの。集成。「多年の研究を―する」
● 御の字
非常に結構なこと。望んだことがかなって十分満足できること。
「出費がこの程度で済めば―だ」
● 大雑把
1. 細部にまで注意が届かず、雑であるさま。「―な仕事ぶり」
2. 細部にわたらず、全体を大きくとらえるさま。おおまか。
「―な見積もりを出す」
● デリカシー
そもそも「デリカシー」とは、どんな意味なのでしょう。
デリカシーは、英語の「デリケート」の名詞形で、繊細とか、気配り、
配慮といった意味になります。つまり、「デリカシーがない」というのは、
「配慮がない」「気配りができない」というネガティブな意味で使われ
ているんですね。2020/05/29
● 鬼に金棒
「鬼に金棒」とは、ただでさえ強い者に何かが加わることにより、
さらにその強さが増すことをあらわすことわざです。2021/06/06
● 気配り
あれこれ気を使うこと。手抜かりがないように注意すること。
心づかい。配慮。「―が行き届く」「会場の設営に―する」
● 心配り
あれこれと気をつかうこと。心づかい。配慮。「温かい―」
この続きは、次回に。