「人を動かす人」になれ! ㊿+22
75.はじめて部下を持った時の三つの原則
はじめて部下を持った人は、昨日までの自分の立場を振り返ってみることだ。
いかにすばらしい上司であっても、イヤなところがいくつかあったはずだ。
それを反面教師にするのが部下の心をつかむ最も手っ取り早い方法だ。
つまり、長所はどんどん真似て、イヤだったことはその逆をやる。
実に簡単な理屈だ。ところが、人間というのは摩訶不思議なもので、上司の
長所はなかなか取り入れられないのに、欠点の方はいとも簡単に真似て
しまう。このあたりに充分に注意しないと部下の信頼は得られない。
もう一つ大事なポイントは、部下が何か間違いを犯したときに「ここが
悪かった、あそこが間違いのもとだった」といった具合に上司が部下を
じわじわと追い込んでいかないからだ。これをやると、逃げ道を失った
部下は「オレだけが悪いんじゃない。会社のシステムにも問題があるし、
前もって上司が一言アドバイスしてくれていれば、こんな問題は起きな
かったはずだ」といったように、責任を転嫁することばかりを考えるように
なる。これでは、すべてが逆効果になってしまう。
では、こんな場合にはどう対処すれば良いのかと言えば、上司は部下から
間違いを犯した経緯についての報告を受けるという形にして聞き役に
回るのである。開き直りにならない程度の言い訳には耳を傾け、「ところで
問題はどこにあったのだろう」というような問いかけをすることで、本人
自身に過ちに気づかせて反省を促す方向へ持っていく。そして、最後に
「誰でも一度や二度の失敗はある。失敗がなければ大きくにもなれない」
といった言葉をかけて、励ましてやるぐらいの器量が必要だ。
こういった対応ができれば、部下もグンとやる気が出てくると思う。
反対に、成功したときにはストレートに喜びを表現する。「すごいじゃ
ないか、おめでとう」と声をかけ、手を握り、肩を叩くなど全身を使って
喜びをあらわす。一緒に祝杯をあげるのもいいだろう。
もちろん、これらの方法は、はじめて部下を持った人だけではなく、部下を
持つすべての人に使えるテクニックであるが、特に若葉マークをつけた
リーダーは、少なくともこの三つのやり方を身につけてほしい。
これが部下の心を動かす一番の近道である。
● 反面教師
悪い面の見本で、それを見るとそうなってはいけないと教えられる人や
事例のこと。それを見ることで、反省の材料となるような人や事例。
その言行が、そうしてはいけないという反対の面から、人を教育するのに
役立つのでいう。
● 摩訶不思議
非常に不思議なこと。また、そのさま。「なんとも―な事件だ」
● 転嫁
自分の罪・責任などを他になすりつけること。「失敗の責任を―する」
● 器量
ある事をするのにふさわしい能力や人徳。「指導者としての―に乏しい」
この続きは、次回に。