「人を動かす人」になれ! ㊿+22
77.一日一○○回でも同じことをいわないと、考え方、方針は理解されない
部下とは、これまでに何度かじっくりと腹を割って話し合ったから、オレの
考え方や立場、方針などを理解してくれているはずだ、と考えている
リーダーは多い。だが、わたしにいわせれば、これは完全な勘違いで
ある。
生まれ育ってきた環境、受けてきた教育、経験してきたこと、影響を
受けた人物や友人などすべてが異なる他人同士が、二度や三度話し合った
くらいで、お互いを理解できるはずなどないのである。
同じ親、同じ環境で育った兄弟姉妹であっても、兄や姉は弟や妹を理解
できないというし、弟や妹は兄や姉の考えていることはわからないという。
リーダーと部下のギャップは、兄弟姉妹のそれとは比較にならないくらい
深くて大きいと考える方が自然であろう。
ならば、どうやってこのギャップを埋めるのか。これは、それこそ部下の
耳にタコができるまで、同じことを繰り返しアナウンスし、リーダー自らも
率先垂範で部下に手本を示す以外に道はない。
要は、リーダーと部下との根比べなのである。
たとえばわが社の『三大精神』である「情熱・熱意・執念」「知的ハード
ワーキング」「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」は、日本語、英語、
中国語、タイ語の四ヵ国語を並べたポスターをつくり、国内、海外の拠点の
いたるところに貼ってある。
貼ってあるのだからこれでよしと考える人物は、リーダーとして失格だ。
単なる体裁、かけ声だけの精神やスローガンならわざわざ手間暇かけて
つくる必要などない。部下に対して一日一○○回この言葉を投げかけ、また
この精神に即って判断を下し、行動面でも実践していくのが本物のリーダー
としての条件である。
実際に試してみるとわかってもらえると思うが、部下に対して会社の
スローガンを一日に一回口にしたとすると、部下には「またか、もうその
言葉は聞き飽きた」という気持ちが芽生え、場合によっては拒否反応を
示すようになる。
ところが、リーダーが一日に一○○回、これを一年間口にし続け、あらゆる
場面で自らも実践していけば、やがて部下は何もいわなくてもリーダーを
見習うようになる。勝負に勝つためには、まず自分との勝負に勝たねば
ならない。その情熱、熱意、執念は必ず部下に通じる。
これこそが真の教育であり、人を動かす最大の要素でもあるのだ。
● タコができる
みみ【耳】 に 胼胝(たこ)が=できる[=生(しょう)じる・入(い)る]
同じことを何度も聞かされることをいう語。
● 率先垂範
人の先に立って模範を示すこと。
● 手間暇かける
時間をかけ、労力・技能も十分に費やし、丹念に制作・作成する、という
様子を表現する言い回し。「手間」は労力、「ひま」は時間を指すと
捉えられる。「手間ひま」の語は、国語辞書などでは「手間隙」の字で
表記される場合が多い。もっとも「隙」も「暇」もほぼ同義であり、
「手間暇」の表記が併記されてある場合も少なくない。
この続きは、次回に。