「人を動かす人」になれ! ㊿+27
9章 組織を動かす人が絶対知らなければならない「考え方」
82.キャリア、年齢、学歴は一切関係ないと考えろ!
部下が上司を信頼し、尊敬するのにはそれなりの条件がある。
豊富な知識や人脈、情報量、人間性などもその条件であるが、こと能力に
限定すればどれぐらいの格差が必要なのであろうか。
一般社員と課長クラスでは最低でも五倍、部長クラスになれば軽く一○倍
ぐらいの能力差がなければならないというのが、わたしの考えだ。
わかりやすく数字で示すと、一般の営業マンが月に平均一○○○万円の売上を
上げているのであれば、営業課長は五○○○万円、営業部長であれば一億円の
売上が必要になるということである。だが、現実にはこれだけの能力の
差をつけられる管理者は、ほんの一握りしかいないのが現実だ。
せいぜい二倍から三倍程度の格差で課長や部長をやっている。
しかし、経営者の立場からすると、管理者と部下との力が接近していれば
いるほど、さまざまな問題を抱えることになる。
その一つが部下をクサらせ、やる気を失わせることである。
口には出さなくとも「そんなに能力には差があるわけではないのに、
もらう給与、賞与は差がありすぎる」「われわれが頑張っているから
部長や課長をやっていける」というような気持ちが、部下の間に芽生えて
くるだけでも会社にとっては大きなマイナスである。
もう一つは、部下の目標がこぢんまりとまとまってしまうということ。
「あの程度の実力で課長や部長になれるのか」と部下が感じるようでは、
会社の成長どころか存続していくことさえ危うくなる。
経営者はこのことを肝に銘じておかないと、組織が動脈硬化を起こして
しまう。
わが社の場合、管理者の登用にキャリア、年齢、学歴は一切関係ない。
能力、実力一辺倒で、誰もが納得のいく人事考課制度を採用している。
だから、部長になるまでは頑張ったのに、部長になった途端に気を許した
というのであれば、相応の役職に降格することも辞さない。
また、部長の席が空席になっているからといっても、順送り人事はやらない。
適任者がいなければ、役員や社長が代行する。
一方で、わたし自身が先頭に立ってかなり厳しい管理者教育も実施して
いる。ライオンはわが子を谷底へ突き落として、はい上がってくることの
できた子供だけを育てるといわれるが、わが社の管理者教育もこれに近い
ところがある。一匹の狼が率いる四九匹の羊の集団と、一匹の羊が率いる
四九匹の狼の集団が戦ったら、狼がリーダーの集団が勝つ。
組織をダイナミックに動かそうとするなら、まず強いリーダーを選び、
育てる。この原則を無視する経営者に輝かしい未来はない。
● 肝に銘じる
強く心に留め、けっして忘れないようにすること。
「肝に銘ずる」と書く。
● ダイナミック(dynamic)
[形動]動的なさま。力強く生き生きと躍動するさま。
「―な演技」⇔スタティック。
この続きは、次回に。