「人を動かす人」になれ! ㊿+34
89.一度、社風をつくってしくまえば、新人も自然と教育される
たしかに、企業の歴史とともに自然にでき上がってくる社風というものも
あるが、わたしは、基本的に社風とは創業者、あるいは経営トップの
ポリシーによってつくり上げていくべきものだと考えている。
このことがどういったことなのか、わかりやすい例を上げてみよう。
わたしが、技術部長に電話をかけて「ちょっと確認したいことがあるので、
すぐに来てほしい」と告げたとしよう。これが日本電産の部長であれば、
一分もしないうちに廊下を駆ける足音が聞こえ、部屋のドアがノック
される。だが、M&Aによって傘下に収めて間もない関連会社の技術部長
であれば、まずこのようにならない。受話器を置いてから五分経っても
一○分経ってもあられない。一五分ほど経過して、業を煮やして再び電話を
入れると、「すぐに伺います」とのんびりした返事があり、それからさらに
五、六分してやっと当人がやってくる。
後者は、歴史とともに自然にでき上がった社風なのだろう。
しかし、前者の場合は明らかに違う。創業から二五年間、できない社員
には「会社の最高責任者が呼んでいるのに、なぜ五分もかかるのか。
走ってくれば一分もかからないはずだ」と机を叩き、怒鳴りつけて教育
してきた結果できた社風なのだ。
一事が万事こうした調子で、同じように部下に仕事を依頼しても、日本
電産の社員なら特に断らなくても次の日にはでき上がってくる。
ところが、グループに入って間もない関連会社では「急いでくれ」と念を
押したにもかかわらず、二、三日はかかるといった具合だ。
これも一つ一つを取り上げれば、それほど大きな問題ではないのかも
知れない。しかし、ともに社員が数百名ずついて、一年間のトータルで
考えると、この差ははかり知れないものになる。
人を動かすのは、それほどむずかしいことではない。このような社風を
つくってしまえばよいだけだ。上司に呼ばれたときに、周りのみんなが
駆け足で駆けつけるのを見れば、新入社員もこれを自然に真似るように
なる。経営者、リーダーは部下に動いてほしいように教育して社風を
つくっていけばいい。これがリーダーシップである。
ちなみに、先ほどの関連会社の部長連中に確認すると、これまでの経営
トップは「社長が呼んでいるのだから走ってこい」などとはいわなかった
そうだ。わたしが一度注意した部長は、それ以降走ってくるようになった。
● 社風
社風とは、企業がその歴史のなかで培ってきた文化や価値観のこと。
文化や価値観は、経営理念、社員一人ひとりの行動や考え方などさまざま
なものに現れます。
● ポリシー(policy)
2. 事を行う際の方針。「プライバシー―」「行動に―がない」
● 業を煮やす
事が思うように運ばず、腹を立てる。
「無意味な発言が続き―・して席を立つ」
● 一事が万事
わずか一つの物事から、他のすべてのことを推し量ることができる。
一つの小さな事柄の調子が他のすべての場合に現れる。
「彼のやることは―間が抜けている」
● リーダーシップ
リーダーシップとは、「統率力」のこと。ビジネスにおいては、目標を
設定して組織を導いていく能力のことを意味するのが一般的です。
リーダーシップは、組織の結束を高め、業務を効率的に進める上で欠かせ
ないものです。
この続きは、次回に。