P.F.ドラッカー 「仕事の哲学」㉔
□ 自らと部下に厳しく
成功している組織には、愛想が悪く、あえて人を助けようとせず、人づき
あいもよくない上司が必ずいる。冷たく、厳しく、不愉快そうでありながら、
誰よりも多くの人たちを育成する人がいる。
最も好かれている人よりも尊敬を得ている人がいる。
自らと部下に厳しく、プロの能力を要求する人がいる。
—–『現代の経営』
● 愛想
1. 人に接するときの態度。また、人当たりのいい態度。
「店員の―のいい店」「―のない返事」
2. 人に対する好意・信頼感。「―を尽かす」
(多く「お愛想」の形で)
㋐ 相手の機嫌をとるための言葉・振る舞い。「―を言う」「お―で食事に誘う」
㋑ 客などに対するもてなし・心遣い。「何の―もなくてすみません」
㋒ 飲食店などの勘定。「お―願います」
□ プロフェッショナルの条件
厳しいプロは、高い目標を掲げ、それを実現することを求める。
誰が正しいかではなく、何が正しいかを考える。頭のよさではなく、
真摯さを大切にする。つまるところ、この真摯さなる資質に欠ける者は、
いかに人好きで、人助けがうまく、人づきあいがよく、有能で頭がよく
とも、組織にとって危険であり、上司および紳士として不適格である。
—–『現代の経営』
● 真摯さ
ひたむきに、誠実に事に当るさま。 またはその度合い。
□ 信頼とは真摯さへの確信
信頼するということは、リーダーを好きになることではない。
つねに同意できることでもない。リーダーのいうことが真意であると
確信をもてることである。
それは、真摯さという誠に古くさい者に対する確信である。
—–『未来企業』
● 同意
1. 他人の意見などに対して、賛成すること。「―を得る」「提案に―する」
2. 同じ意見。同じ考え。「―の士を募る」
3. 同じ意味。同義。
● 真意
本当の気持ち・意向。また、本当の意味。「―をくみとる」「―を探る」
□ リーダーについての唯一の定義
信頼がないかぎり従う者はいない。そもそもリーダーについての唯一の
定義が、つき従う者がいることである。
—–『未来企業』
● 唯一
ただ一つであること。それ以外にはないこと。ゆいいち。ゆいつ。
「世界で―の逸品」「―の趣味」
● 定義
物事の意味・内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定すること。
「敬語の用法を―する」
□ エネルギーとビジョンを創造する
真のリーダーは、人間のエネルギーとビジョンを想像することが自らの
役割であることを知っている。
—–『未来企業』
● エネルギー(Energy)
物事をなしとげる気力・活力。精力。「仕事で―を消耗する」「若い―」
● ビジョン(vision)
将来の構想。展望。また、将来を見通す力。洞察力。
「リーダーに―がない」「―を掲げる」
□ 組織の文化がリーダーシップの素地
リーダーシップの素地として、行動と責任についての厳格な原則、高い
成果基準、人と仕事に対する敬意を、日常の仕事において確信するという
組織の文化に優るものはない。
—-『現代の経営』
● 素地
1. 手を加えない、もともとの性質。きじ。したじ。
2. 何かをするときの基礎。土台。「―があるのでのみこみが早い」
● 厳格
規律や道徳にきびしく、不正や怠慢を許さないこと。また、そのさま。
「―な教育」「―に規定する」
● 成果基準
ロイヤルティと『他者視点』『成果基準』
古くから企業が組織力向上を図るためには、「組織に対してロイヤルティを
持った社員を育成することが大切である」と言われる。
ロイヤルティとは忠誠、愛着などの意味を持つ言葉だが、マネジメント
用語として使用する場合には「組織に対する忠誠心、帰属意識」などの
意味で使われる。従って、「組織に対してロイヤルティを持った社員を
育成することが大切である」とは「組織に対して忠誠心、帰属意識を
持った社員を育成することが大切である」という意味になる。
「今どき、組織に対する忠誠心などとは古臭い」と思われるかもしれないが、
ここで言う忠誠心や帰属意識とは、言い換えれば「組織や経営者の立場で
思考し、行動すること」を意味している。つまり、ロイヤルティを持った
社員とは、まさしく『他者視点』『成果基準』の志向を持った社員と言える。
従って、企業が組織力向上を図るためには、『他者視点』『成果基準』を
持った社員を育成することが重要というわけである。
いかに『他者視点』『成果基準』を持った社員を育成できるかがリーダーの
課題となる。リーダーから末端社員まで皆が『他者視点』『成果基準』を
持てれば、1分相当の給料よりも遥かに大きなインセンティブを獲得できる
に違いない。
この続きは、次回に。