ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+2
□ 会議の成果をあげる
会議、報告書、プレゼンテーションは、エグゼクティブの仕事の典型的な
光景である。それらは、彼らに特有の日常の道具である。
しかもそれらは膨大な時間を要求する。
したがって成果を上げるには、会議や報告書やプレゼンテーションから
何を得るべきかを知り、何を目的とすべきかを知らなければならない。
「なぜこの会議を開くのか」「決定するためか、情報を与えるためか、
確認するためか」を問う必要がある。
さらにまた、会議を招集する前、報告書を開く前、説明会を準備する前に、
それぞれの目的を明らかにすべきであることを主張しなければならない。
そして、それぞれの会議を自分たちの貢献に役立つものにしなければ
ならない。
会議を成果あるものにするためには、会議の冒頭に、会議の目的と果たす
べき貢献を明らかにしなければならない。そして会議をその目的に沿って
進めなければならない。目的のある会議を、誰もが勝手にアイデアをいい
合う懇談の場としてはならない。
あるいは、思考と検討のための会議を誰かのプレゼンテーションの場に
させてはならない。出席者の全員を刺激し、全員を挑戦させるものに
しなければならない。会議の終わりには、冒頭の説明に戻り、結論を
会議開催の意図と関連づけなければならない。
会議を生産的にするための原則は他にもある。
例えば、会議を司会しつつ重要な発言に耳を傾けることはできる。
あるいは討議に参加して発言することもできる。しかしこの両方を同時に
行うことはできない。だがこの原則は、明白でありながら大体において
無視されている。そして最も重要な原則は、会議の冒頭から貢献に焦点を
合わせることである。
われわれは貢献に焦点を合わせることによって、基本的な問題の一つに
ついて解決に近づくことができる。混乱と混沌に対する対応であり、
それらのうち意味あるものと雑音にすぎないものとの識別である。
われわれは、貢献に焦点を合わせることによって、原則とすべきものを
知る。かつ諸々の事象の意味を知る。また、貢献に焦点を合わせることに
よって、組織の中にあって他の人たちに依存しているという組織に働く
人に特有の弱みを強みに転換することができる。
すなわち、チームの形成を可能とする。
そして最後に、貢献に焦点を合わせることによって、組織の内部にひき
こもることを防ぐ。貢献に焦点を合わせることによって、組織の内部に
おける努力、仕事、諸々の関係から、組織の外部すなわち組織の成果に
目を向けることができる。市場、顧客、地域の患者、一般市民など外部の
世界と直接関係をもつことができる。
貢献に焦点を合わせるということは、つまるところ、成果を上げることに
焦点を合わせることである。
● 招集
人を招き集めること。「関係者を―して会議を開く」「―をかける」
● 懇談
打ち解けて親しく話し合うこと。「先生と父兄が―する」「―会」
● 混乱
物事が入り乱れて秩序をなくすこと。いろいろなものが入りまじって、
整理がつかなくなること。
「交通機関に―を来たす」「経済の―をまねく」「頭が―して考えられない」
● 混沌
すべてが入りまじって区別がつかないさま。
「―たる政治情勢」「次期会長の人選は―としてきた」
この続きは、次回に。