ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+5
成果をあげるエグゼクティブは、部下が上司たる自分を喜ばせるためなど
でなく、仕事をするために給料を払われていることを認識している。
オペラの舞台監督は、プリマドンナが客を集めてくれるかぎり、彼女が
何度かんしゃくを起こそうと問題ではないことを知っている。
最高の舞台をつとめあげるうえで必要なかんしゃくであるならば、それを
我慢することも舞台監督の報酬のうちである。
同じように、教授が学部長に対して愛想がよいか、教授会で協力的である
かなどは問題ではない。学部長は、一流の教授や学者が仕事において成果を
上げられる環境を整えるために、給料を払われている。
日常の大学運営において多少の不愉快さが伴ったとしても安いものである。
人に成果を上げさせるには、「自分とうまくいっているか」を考えては
ならない。「いかなる貢献ができるか」を問わなければならない。
「何ができないか」を考えてもならない。「何を非常によくできるか」を
考えなければならない。特に人事では一つの重要な分野における卓越性を
求めなければならない。
強みをもつ分野を探し、それを仕事に適用させなければならないことは、
人の特性から来るところの必然である。全人的な人間や成熟した人を求める
議論には、人の最も特殊な才能、すなわち一つの活動や成果のためのすべてを
投入できるという能力に対する妬みである。
人の卓越性は、一つの分野、あるいはわずかの分野において実現される
のみである。
確かに、多様性な者に関心をもつ者は存在する。万能の天才といわれる
人たちである。ただし多くの分野において卓越した実績のある者はいない。
レオナルド・ダ・ヴィンチでさえ、その広範な関心にもかかわらず、
デザインの分野で業績を残しただけである。
もしゲーテの詩がすべて失われており、余技の光学や哲学の業績が残って
いただけならば、百科事典の脚注にも値しなかったに違いない。
● 妬み(そねみ)
他人を羨ましく思い、その分だけ憎らしいと思う感情。 「嫉妬」と同義。
「妬み」と「嫉み」はいずれも羨望と憎しみの入り混じった感情を表す。
「妬み」は羨ましく口惜しい、腹立たしいといった意味合いが若干強い。
● レオナルド・ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519年)はルネサンス期の15~16世紀を
生きた、イタリア出身の芸術家。 「モナ・リザ」「最後の晩餐」など
優れた芸術作品を残しており、後年にも多大な影響を与えた天才芸術家
です。 「ダ・ヴィンチ」と呼ばれることも多いですが、実これは「ヴィンチ
村の出身」という意味。2021/11/12
● ゲーテ
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von
Goethe[注釈 1]、1749年8月28日 – 1832年3月22日[1])は、ドイツの詩人、
劇作家、小説家、自然科学者(色彩論、形態学、生物学、地質学、自然
哲学、汎神論)、政治家、法律家。ドイツを代表する文豪であり、小説
『若きウェルテルの悩み』『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』、
叙事詩『ヘルマンとドロテーア』、詩劇『ファウスト』など広い分野で
重要な作品を残した。
● 余技
他のこと。他にとるべき方法。また、別の意見。
● 脚注
書物などの本文の下に付された注。フットノート。⇔頭注。
この続きは、次回に。