ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+33
古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法で
ある。アイデアが不足している組織はない。創造力が問題なのではない。
せっかくのよいアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが
問題である。みなが昨日の仕事に忙しい。だがあらゆる計画や活動を
定期的に審査し、有用性が証明されないものは廃棄するようにするならば、
最も頑強な官僚組織においてさえ創造性は驚くほど刺激されていく。
デュポンは、製品や工程が陳腐化し始める前に自らそれらを放棄する
ことによって、世界の大手化学品メーカーの中でも特に優れた業績を
収めてきた。同社は、人と資金という貴重な資源を過去の防衛のために
投じはしなかった。
しかし、ほとんどの企業が「馬車用の鞭であっても効率よく生産すれば
市場がある」「事業の土台をつくったこの製品の市場を確保することが
われわれの務めである」などという間違った理念のものにマネジメントを
している。
実は創造性開発セミナーを受講させたり新製品の不足について泣き言を
いったりするのが、そのような企業である。
これに対しデュポンでは、新製品を開発して売ることに忙しく、セミナーに
人を送ったり泣き言を並べたりしている暇はない。
新しく生産的なものを可能とするために、古い時代遅れのものを廃棄して
いくことの必要は、普遍的である。一八二五年頃、もしアメリカに運輸を
管轄する省が存在していたならば、今日に至っても馬の再訓練のための
珍妙な研究計画とともに膨大な国家予算で支えられる国有駅馬車が存在
していたことはほぼ確実だろう。
● 普遍的
広く行き渡るさま。極めて多くの物事にあてはまるさま。
「生物に共通の―な性質」
● 管轄
権限をもって支配すること。また、その支配の及ぶ範囲。
「国土交通省が―する機関」「―外」
この続きは、次回に。