ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+58
P.F. Drucker Eternal Collection 1
The Effective Executive
Chapter:7
第7章❖成果をあげる意思決定とは
□ 正しい意思決定の要件
意思決定とは判断である。いくつかの選択肢からの選択である。
しかし、決定が正しいものと間違ったものからの選択であることは稀で
ある。せいぜいのところ、かなり正しいものとおそらく間違っているで
あろうものから選択である。はるかに多いのは、一方が他方よりもたぶん
正しいだろうとさえいえない二つの行動からの選択である。
意思決定についての文献のほとんどが、まず事実を探せという。
だが、成果をあげる者は事実からはスタートできないことを知っている。
誰もが自分の意見からスタートする。しかし、意見は未検証の仮説に
すぎず、したがって現実に検証されなければならない。
そもそも何が事実であるかを確定するには、有意性の基準、特に評価の
基準についての決定が必要である。これが成果をあげる決定の要であり、
通常最も判断の分かれるところである。
したがって成果をあげる決定は、決定についての文献の多くが説いている
ような事実についての合意からスタートすることはない。
正しい決定は、共通の理解と、対立する意見、競合する選択肢をめぐる
検討から生まれる。
最初に事実を把握することはできない。有意性の基準がなければ事実と
いうものがありえない。事象そのものは事実ではない。
物理においては物の味は事実ではない。またかなり最近まで物の色も事実
ではなかった。これに対し、料理においては味は格段に重要な事実である。
絵画においては色が意味をもつ。物理、料理、絵画はそれぞれ異なるものを
意味ありとする。したがって、それぞれ異なるものを事実とする。
この続きは、次回に。