ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+73
(2) 第二のステップは、貢献に焦点を合わせることである。
これは作業的ではなく概念的であり、機械的ではなく分析的であり、
効率ではなく成果への関心の段階である。
この段階では、エグゼクティブは自らがそこにいる理由である貢献に
ついて徹底的に考えなければならない。
だが複雑なことは何もない。貢献についての自らへの問いは簡単であり
定型的であってよい。しかし、それらの問いに対する答えは、自らに
対する高度の要求、自らの組織の目的についての検討、価値への関心を
必然とする。特に自らに対し、高い水準を課すことを必然とする。
何よりも、それらの問いは、上司を喜ばせる部下としての行動ではなく
エグゼクティブとしての責任ある行動を要求するそしてエグゼクティブは、
自らと自らの視点の焦点を貢献に合わせることによって、手段ではなく
目的を中心に考えるようになる。
● 概念的
概念によっているさま。 個々の特性は見ず、共通点だけを大まかに取り
あげるさま。ときに、現実味に欠ける、具体的でないという非難の意味が
込められる。
● 機械的
機械によって為されるさま。多様性や例外を考慮せず、ルールや規定を
単純に適用するさま。 意識を集中することなく漫然と動作を行うさま。
● 定型的
一定の形や決まった型などに基づいていること、従っていること。
(3) 強みを生かすということは行動することである。人すなわち自らと
他人を救うということである。それは、行動の価値体系である。
強みを生かすことは、実行によって修得すべきことであり、実践によって
自己開発すべきものである。そしてエグゼクティブたる者は、強みを
生かすことによって個人の目的と組織のニーズを結びつけ、個人の能力と
組織の業績を結びつけ、個人の自己実現と組織の機会を結びつける。
(4) 次の段階としての「最も重要なことは集中せよ」(第5章)は、「汝の
時間を知れ」(第2章)に対置されるものである。
この二つのエグゼクティブの成果を支える二本の柱である。
ここでは時間という資源ではなく、われわれに起こることではなく、
われわれがわれわれの環境に対し起こすものである。
ここで発展させるべきものは、情報ではなく、洞察、自立、勇気など
人に関するものである。換言するならば、それがリーダーシップである。
聡明さや才能によるリーダーシップではなく、持続的なリーダーシップ、
献身、決断、目的意識によるリーダーシップである。
● 対置
二つの物事を対照させるようにおくこと。向き合うように据えること。
「東西に塔を―させる」
● 洞察
物事を観察して、その本質や、奥底にあるものを見抜くこと。
見通すこと。「人間の心理を―する」「―力」
● 自立
他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに、
存在すること。「精神的に―する」
● 換言
別の言葉で言い表すこと。言いかえること。「以上のことを―すれば」
● 献身
他人やある物事のために、わが身を犠牲にして尽くすこと。
「国家の発展に―する」
この続きは、次回に。