P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-2
まず、輸送の分析を行い、輸送費を三分の一削減した。特に、工場間の
輸送をほとんどなくした。
最終価格のほぼ一○%を占めていた倉庫や在庫関係のコストも大幅に削減
した。調べてみたところ、古くなった小さな倉庫をたくさんもつよりも
近代的な大きな倉庫をいくつかもつほうが、安いコストで速くサービス
できることが明らかになった。
また、流通業者の在庫は、新しい倉庫において二四時間体制をとることに
なったため、ほとんど必要がなくなった。売掛金は、受注事務、信用調査
および請求事務とともに大幅に減らした。同時に営業活動の効率も大幅に
向上させた。
すでに、成果をもたらす領域についての分析の結果、一万社に及ぶ流通
業者のうち上位二○○○社が売上げの八割を占め、残りの八○○○社がコストの
八割を占めていることが明らかになっていた。したがって効率的なコスト
管理のためには、まず初めに年間の売上げが三○○○ドル未満の小売業者、
すなわち総売上高の五、六%を占めるにすぎない三○○○社について何らかの
対策をとる必要があった。
輸送、在庫、売掛金、管理について分析したところ、三○○○社の小売業者に
よって、それらのコストポイントの小売業者の総コストの実に四割が
占められていることが明らかになった。売掛金の大部分がそれらの小売
業者によって占められており、事実上ユニバーサル・プロダクツ社が
小売業者の運転資金の融資を行なっている結果になっていた。
また、注文が小口なために輸送や受注事務にも大きなコストがかかって
いた。そしてもちろん、信用調査や請求事務のためのコストも発生して
いた。そこで、ユニバーサル・プロダクツ社では、それらの小売業者とは
現金決済にすることとした。営業部員による訪問もやめ、ダイレクト
メールによる商品案内のみとした。受注も、数量に最低基準を設け注文書に
よる発注のみを受けることにした。輸送のコストも発注者負担とした。
これらの新しい措置の結果、三年後には、総コストの九%、実に生産
コストに匹敵するコストの削減を実現した。売掛金はほとんどなく信用
調査や受注事務のコストもほとんどなくなった。しかもそれらの小売業者に
対する売上げは三分の一、すなわち総売上げの二%分減少しただけだった。
それどころか総売上高は上昇した。
営業部員は、非生産的な得意先を訪問しなくてもすむようになり、時間の
三分の一を節約できるようになった。その分、売上げの機会のあるところ
すなわち大口の小売業者への訪問に集中できるようになった。
この続きは、次回に。