P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-25
□ わが社が得意とするものは何か
自社の知識を把握するための知識分析の最善の方法は、自社が成功して
きたものと失敗してきたものを調べることである。
自社が得意とするものは、自社と同じようなマネジメントが行われており
同じような能力をもつ競争相手が、自社と逆の経験をしている場合によく
わかる。
したがって、他社はうまくできなかったが、わが社はさしたる苦労もなしに
できたものは何かを問わなければならない。
同時に、他社はさしたる苦労なしにできているのに、わが社はうまく
できなかったものは何かを問わなければならない。
例えば、アメリカを代表する企業、GMとGEの新規事業についての対照的な
仕事ぶりがある。
GEは、無からスタートし、新しいアイデアを取り上げて、そこから事業を
築き上げるうえで著しい能力を示してきた。同社は第二次世界大戦中、
アメリカは工業用ダイヤモンドの輸入に依存することなく、自給できる
ようにならなければならないとの結論を出した。そしてわずか五年後には、
ダイヤモンドの商業生産の道を発見した。さらに一○年後の一九六○年
前後には、その人造ダイヤモンド事業は、世界最大の規模にまで成長した。
他方、GMも、事業発展させるうえで同じように傑出した記録をもって
いる。GMは、すでにかなりの規模に達し、市場においてすでに若干の
リーダーシップを獲得している企業を買収する。そのような並の企業を
買収しては数年後にはチャンピオンに仕上げる。それは、あまりに稀な
能力であって、二○世紀の魔女とさえいわれ、反トラスト法違反では
ないかとさえ疑われている。
しかし両社とも、他方にとって易しいことがうまくできないようである。
私の知るかぎり、GMは新しい事業をスタートさせたことがない。
そしてGEは事業の買収ではいつも運がない。
この続きは、次回に。