P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-34
□ わが社に欠けているものは何か
現在行っていることの解釈よりもさらに重要なことは、当然行っている
べきであるにもかかわらずまだ行っていないものの発見である。
ここにおいても、マーケティング分析と知識分析を事業診断に重ねることに
よって、何が欠けているかを明らかにする。
製品、市場、流通チャネルなど成果をもたらす領域には、常に、三つの
種類の欠けたものがある。
それらはあらゆる企業に欠けているといってよい。
一つ目の欠けているものは、全盛期を過ぎたものに代わるべきものを開発
する努力である。製品だけではない。市場、最終用途、流通チャネルに
ついてもいえる。新しい市場や新しい流通チャネルの開発は、新しい機器の
開発と同じ意味における開発である。それは、機器の開発と同じように
知識、作業、資金を必要とする。
二つ目の欠けているものは、機会と成功の追求である。
ある機器メーカーで行ったマーケティング分析は、そのメーカーの主力
製品がある生産財市場では高く評価されているものの、さして売れていない
ことを明らかにした。他方、競争相手の製品は品質が劣るうえに値段も
高かったが売れていた。その機器をほかの機器に接続させる伝導装置付きで
売っていたのが成功の原因だった。機器本体では遅れていた競争相手は、
伝導装置を中心にその機器を再設計していた。
一方当該メーカーでは、なぜかは誰にもわからなかったが、営業部門が
その機器の対象産業には伝導装置は必要ないものと思い込んでいた。
同じ見落としはあらゆる企業にある。マネジメントも全能ではない。
したがって、自らの目を養うための体系的な努力がなければ、最も明白
なことを見落とし、最も明確な兆候を見誤る。
流通チャネルに欠けたものがある場合もある。売るべき商品やサービスは
ある。そしてその販売促進を行う。見込客を説得する。しかし彼らがいざ
買おうとするとき、彼らが買い物するところでは手に入らない。
流通チャネルが顧客のところまで届いていない、あるいは途中で詰まって
いる。
製品やその提供の仕方を変えたときには、流通チャネルを徹底的にチェック
しなければならない。そして逆に、例えば第二次世界大戦以降のアメリカ
経済における大量小売方式への急傾斜のように、流通チャネルが変わった
ときには、必ず、製品、製品ライン、顧客、市場、最終用途をチェック
しなければならない。
この続きは、次回に。