「道をひらく」松下幸之助 ⑯
・日に三転す
この宇宙に存在するものは、すべて刻々に動いている。
万物流転、きのうの姿は、もはやそのままでは きょう存在しないし、
一瞬一瞬にその姿を変えつつある。いいかえれば、これはすなわち
日に新たということで、日に新たな生成発展ということが、この宇宙の
大原理であるといえよう。
人間もまたこの大原理のなかに生かされている。きのうの姿はきょう
はない。刻々に移り変わって、刻々に新たな姿が生み出されてくる。
そこにまた人間社会の生成発展がある。
人の考えもまた同じ。古人は「君子は日に三転す」と教えた。
一日に三度も考えが変わるということは、すなわちそれだけ新たな
ものを見いだし、生み出しているからこそで、これこそ君子なりと
いうわけである。日に一転もしないようではいけないというのである。
おたがいにともすれば、変わることにおそれを持ち、変えることに
不安を持つ。これも人間の一面であろうが、しかしそれはすでに
何かにとらわれた姿ではあるまいか。
一転二転は進歩の姿、さらに日に三転よし、四転よし、そこにこそ
生成発展があると観ずるのも一つの見方ではなかろうか。
● 万物流転(ばんぶつるてん)
万物流転は、この世に存在するありとあらゆるものを表す「万物」と、
流れる川の水のように絶えず変わり続けることを表す「流転」の2つの
熟語で構成される四字熟語です。
この世にあるすべてのものは常に変わり続けており、二度と同じ形で
現れることはない、というのが万物流転の指す意味となります。
2021/12/02
● 君子は日に三転す
「君子は日に三転す」という言葉。君子というものは、朝考えたことも
昼になればもう変わってしまう。昼は朝考えたことと違ったことを考え、
違ったことを言わなくてはならない。昼考えたものは、晩にまたさらに
変わっている。こういうことを二千数百年も昔に中国の賢人は考えて
いるわけです。それだけ君子は進歩が速いということも意味している。
松下幸之助さんは、日に百転するとも仰せのようです。めまぐるしい
環境の変化、日々の変化、相手とのやり取りの調整・結果で変化する
ことが多いことですね。人、会社は自分一人では生きていけないので、
周りのこと相手のことを想って変化することもあるでしょう。
この続きは、次回に。