「道をひらく」松下幸之助 ⑰
・なぜ
こどもの心は素直である。だからわからぬことがあればすぐに問う。
〝なぜ〟〝なぜ〟と。
こどもは一生懸命である。熱心である。だから与えられた答えを、自分
でも懸命に考える。考えて納得がゆかなければ、どこまでも問いかえす。
〝なぜ〟〝なぜ〟と。
こどもの心には私心がない。とらわれがない。いいものはいいし、
わるいものはわるい。だから思わぬものごとの本質をつくことがしば
しばある。こどもはこうして成長する。〝なぜ〟と問うて、それを
教えられて、その教えを素直に自分で考えて、さらに〝なぜ〟と問い
かえして、そして日一日と成長してゆくのである。
大人もまた同じである。日に新たであるためには、いつも〝なぜ〟と
問わねばならぬ。そしてその答えを、自分でも考え、また他にも教えを
求める。素直で私心なく、熱心で一生懸命ならば、〝なぜ〟と問うタネは
随処にある。それを見失って、きょうはきのうの如く、あすもきょうの
如く、十年一日の如く形式に堕したとき、その人の進歩はとまる。
社会の進歩もとまる。
繁栄は〝なぜ〟と問うところから生まれてくるのである。
● 私心
1. 一個人としての気持ち。自分一人の考え。私意。「―を述べる」
2. 自分一人の利益を図る心。利己心。私情。「―を捨て去る」
● 堕す
物事が好ましくない傾向や状態に陥る。 おちこむ。 堕落する。
この続きは、次回に。