「道をひらく」松下幸之助 ⑱
・花のように
砂漠に見いだす清らかな泉は、旅行く人の喜びであり憩いであり、
そして励ましである。荒凉たる山野に、毅然として咲き誇る一輪の
花は、また旅人へのこよなき慰めとなり励ましとなる。
今の世の中が、荒野の如く荒れ果て枯れ果てているとは敢えて言わな
いが、それでもこのむつかしい時代に、人びとの心は次第に落着きを
失って、索漠たる気配が感ぜられぬこともない。
おたがいに手をつなぎ、助け助けられながら生きねばならぬこの世の
中である。人の心が砂漠の如く荒れ果ててはたまらない。
せめてわれわれだけでも、清らかな泉のように、毅然たる一輪の花の
ように、強く正しく働いてゆこうではないか。
むつかしいことかもしれないが、自分の仕事に誇りを持ち、自分の働きに
意義を感じるならば、わが身の処し方もおのずからに見いだされてくる
であろう。
どんな世の中になっても、あわてず、うろたえず、淡々として社会への
奉仕を心がけてゆこう。その姿自体が、人々にとってすでに大きな
励ましとなり、憩いとなるのである。
花のように。泉のように。そこにわれわれの喜びもある。
この続くは、次回に。