「道をひらく」松下幸之助 ㊷
・一人の知恵
おたがいに神さまではないのだから、一人の知恵には限りがある。
それがどんなに偉い人であっても、やっぱりその人一人の知恵には限り
がある。こんな限りのある知恵で長い人生を歩み、広い世の中を渡ろう
とするのだから、ともすればあちらで迷い、こちらでつまずく。
自分一人ですむことならそれでもまたよいかもしれないが、この世の
中に住む限り、人びとはみなつながっているから、自分がつまずけば、
他人も迷惑をする。他人に迷惑をかけるくらいなら、一人の知恵で
歩まぬほうがいい。
わからないことは聞くことである。知らないことはたずねることである。
たとえわかっていると思うことでも、もう一度、人にきいて見ることで
ある。
「見ること博ければ迷わず。聴くこと聡ければ惑わず」という古言が
ある。相手がどんな人であろうと、こちらに謙虚な気持ちがあるならば、
思わぬ知恵が与えられる。つまり一人の知恵が二人の知恵になるので
ある。二人が三人、三人が四人。多ければ多いほどいい。
衆知を集めるとは、こんな姿をいうのである。
おたがいに、一人の知恵で歩まぬよう心がけたいものである。
● 見ること博ければ迷わず。聴くこと聡ければ惑わず
「見ること博(ひろ)ければ迷わず。 聴くこと聡(さと)ければ惑わず」と。
こちらが謙虚であれば、思わぬ知恵が与えられるもの、一人より二人と
衆知を集めて歩む方がいいと言うことだが、聞くことでより適確な判断が
できることはわかる。2016/05/26
● 衆知を集める
多くの人たちの持っている知恵を聞くこと。
あるいは、意見を聞くこと。
この続きは、次回に。