「道をひらく」松下幸之助 ㊿+9
・恵まれている
人間というものはまことに勝手なもので、他人をうらやみ、そねむことが
あっても、自分がどんなに恵まれた境遇にあるか、ということには案外、
気のつかないことが多い。だからちょっとしたことにも、すぐに不平が
出るし不満を持つのだが、不平や不満の心から、よい知恵も才覚も
わきそうなはずがない。そんなことから、せっかく恵まれた自分の
境遇も、これを自覚しないままに、いつのまにか自分の手でこわして
しまいがちである。
恵みにたいして感謝をし、その感謝の心で生き生きと働いたならば、
次々とよい知恵も生まれて、自他ともにどんなにしあわせな暮らしが
できることか、思えば愚かなことである。
だが恵みを知ることは、そう容易なことではない。古来の聖賢が、恵みを
知れ、と幾方言を費やしてきても、実感としてこれを受け取る人はどれ
だけあるのだろう。頭で理解はしていても、心に直接ひびかないので
ある。そこに人間の弱さがある。
おたがいに修業をしよう。自分は恵まれているということを、直接、
自分の心にひびかすために、日常の立居振舞に、今一度の反省を加え
てみよう。
● そねむ
うらやみ憎む。ねたむ。「そねぶ」とも。
● 才覚
1. すばやく頭を働かせて物事に対応する能力。知恵の働き。機転。
「―のある人」
2. 工夫 (くふう) すること。また、すばやく頭を働かせて物事を処理
すること。「客の好みに合わせて料理を―する」
● 立居振舞
立ち振る舞いの意味は? 立ち振る舞いとは、人と接するときの身の
こなしや日常の動作、態度のことで、「立ち居振る舞い」とも言い
換えられます。 「立ち居振る舞い」の読み方は、「たちいふるまい」
です。2022/10/04
● 難事
処理するのに困難な事柄。むずかしい事実・事柄。⇔易事(いじ)。
● 一利
● 一得
この続きは、次回に。