「道をひらく」松下幸之助 ㊿+28
・知恵の幅
賢い人と愚かな人と、その間にはたいへんな差があるように思うけれど、
もっと大きな自然の知恵から見たならば、それが人間であるかぎり、
賢さにも愚かさにもおのずから限りがあるわけで、どんなに賢い人でも、
神や仏ほどの知恵もなければ、どんなに愚かな人でも、ほんとうは
犬猫に劣るというほどの人もいない。
九十九パーセントまで、大自然から与えられ、大自然の恵みを受けて
いるこの人間の身体である。心である。自分で自分が思うようになる
のは、実はホンのわずかである
そのわずかな知恵の幅の中に、さまざまの人があり、さまざまの生き方
がある。いささかの賢さを誇り、些少の愚かさを卑下してみても、何
ほどのことがあるのであろう。それこそ所詮、稚気に類するというもの
ではなかろうか。
わずかな人間の知恵の幅である。賢さの中にも愚かさがあり、愚かさの
中にも賢さがひそんでいる。
小さな賢愚の中で、小さなおたがいの心を乱すまい。
平々坦々、みずからの与えられた人生を、心しずかに歩みたいもので
ある。
● 些少
「―ながら手助けをしたい」「―な金額ですがお礼のしるしまで」
● 卑下
1. 自分を劣ったものとしていやしめること。へりくだること。
「そんなに―する必要はない」
2. いやしめて見下すこと。また、そのさま。
● 稚気
子供のような気分。子供っぽいようす。「―に富む」「―愛すべし」
● 賢愚
かしこいことと、おろかなこと。賢者と愚者。「精進の前には―なし」
● 平々坦々
きわめて平らなさま。また、何の変化もないさま。
この続きは、次回に。